法人企業統計12年1-3月期~企業収益が大きく改善する一方、設備投資は低調

2012年06月01日

(斎藤 太郎) 日本経済

■見出し

・4四半期ぶりの増益
・企業の設備投資意欲は依然として弱い
・1-3月期・GDP2次速報は1次速報とほぼ変わらず

■introduction

財務省が6月1日に公表した法人企業統計によると、12年 1-3月期の全産業(金融業、保険業を除く、以下同じ)の経常利益は前年比9.3%(10-12月期:同▲10.3%)と4四半期ぶりの増加となった。売上高が前年比0.6%(10-12月期:同▲1.3%)と4四半期ぶりに増加したことに加え、人件費の削減などから利益率が改善したことが増益につながった。
設備投資(ソフトウェアを含む)は前年比3.3%と2四半期連続の増加となったが、10-12月期の同7.6%からは伸びが鈍化した。製造業(10-12月期:前年比5.7%→1-3月期:3.8%)、非製造業は(10-12月期:前年比8.6%→1-3月期:同3.4%)ともに増加幅が縮小した。
毀損した生産設備の復旧が引き続き設備投資の押し上げ要因となっているが、海外経済、為替などの先行き不透明感が高いこともあり、企業は新規投資については慎重な姿勢を崩していないものと考えられる。企業の設備投資意欲を反映する設備投資/キャッシュフロー比率は過去最低水準にあり、設備投資は減価償却費を下回る水準の推移が続いている。
本日の法人企業統計の結果等を受けて、6/8公表予定の12年1-3月期GDP2次速報では、実質GDP成長率が前期比1.0%(前期比年率4.2%)になると予測する。設備投資の上方修正と民間在庫の下方修正が相殺することにより、成長率は1次速報(前期比1.0%、年率4.1%)とほぼ変わらないだろう。
設備投資は1次速報では前期比▲3.9%の大幅減少となっていたが、2次速報では前期比▲2.8%へと上方修正されると予想する。一方、民間在庫は、1次速報で仮置きとなっていた原材料在庫、仕掛品在庫に法人企業統計の結果が反映されることにより、1次速報の前期比0.4%(寄与度)から同0.3%へと下方修正されるだろう。
その他の需要項目では、3月の建設総合統計が反映されることなどから、公的固定資本形成が1次速報の前期比5.4%から同4.8%へと下方修正されると予想する。

経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎(さいとう たろう)

研究領域:経済

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴

・ 1992年:日本生命保険相互会社
・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
・ 2019年8月より現職

・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2018年~ 統計委員会専門委員

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