鉱工業生産12年3月~2ヵ月ぶりの上昇も、市場予想を下回る

2012年04月27日

(斎藤 太郎) 日本経済

■見出し

・2ヵ月ぶりの上昇も、市場予想を下回る
・先行きも緩やかな回復が続く公算

■introduction

経済産業省が4月27日に公表した鉱工業指数によると、12年3月の鉱工業生産指数は前月比1.0%と2ヵ月ぶりの上昇となったが、事前の市場予想(QUICK集計:前月比2.4%、当社予想は同3.0%)を大きく下回った。出荷指数は前月比▲0.1%と2ヵ月ぶりの低下、在庫指数は前月比4.3%と2ヵ月ぶりの上昇となった。
3月の生産を業種別に見ると、輸出の好調やエコカー補助金再開や新車投入に伴う国内販売の好調を受けて、輸送機械が前月比2.7%となり、情報通信機械も前月比7.3%の高い伸びとなったが、在庫調整の進展を受けて持ち直しつつあった電子部品・デバイスが前月比▲2.4%と2ヵ月ぶりに低下した。速報段階で公表される16業種中、11業種が前月比で上昇、5業種が低下した。
製造工業生産予測指数は、12年4月が前月比1.0%、5月が同▲4.1%となった。生産計画の修正状況を示す実現率(3月)、予測修正率(4月)はそれぞれ▲3.2%、▲1.9%と大幅なマイナスとなった。
予測指数を業種別に見ると、4月は情報通信機械を除くほぼ全ての業種で増産計画となっているが、5月は逆にほぼ全ての業種が減産計画となっている。ただし、5月の大幅減産はGW中に工場を稼動しない企業が多いことも影響しているとみられる。
また、液晶テレビの販売低迷が続く情報通信機械は4月が前月比▲15.4%、5月が同▲4.3%の大幅減産計画となっており、引き続き生産全体の足を引っ張ることが見込まれる。
12年3月の生産指数を4月、5月の予測指数で先延ばし(6月は横ばいと仮定)すると、12年4-6月期の鉱工業生産は前期比▲1.7%の低下となる。ただし、5月は工場の稼働日数の影響で下振れしている可能性があり、6月はその反動で高い伸びとなることが見込まれる。海外経済、為替、原油などの外部環境の悪化に伴う下振れリスクには引き続き留意が必要だが、鉱工業生産は昨年秋以降の足踏み状態をすでに脱しており、先行きも緩やかな回復が続くことが予想される。

経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎(さいとう たろう)

研究領域:経済

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴

・ 1992年:日本生命保険相互会社
・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
・ 2019年8月より現職

・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2018年~ 統計委員会専門委員

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