一旦止まった円安の行方~マーケット・カルテ5 月号

2012年04月27日

(上野 剛志) 金融市場・外国為替(通貨・相場)

円・ドルレートは2月半ば以降急速に円安ドル高に動いたのち方向感を欠き、1ドル81円前後での一進一退となっている。2月以降の円安は欧州危機の緊張緩和、堅調な米経済、日本の貿易赤字化などの円安マグマが溜まっていたタイミングでの日銀金融緩和が効いた形だが、むしろ特殊事例だ。今後は基本線に立ち戻り、日米金利差が為替の方向性を決めるはず。米景気は回復傾向を示しているが、3月雇用統計の減速にみられるように当面は緩やかな回復に留まる。FRBも低金利の長期継続を表明しており、米金利は上がりにくい。従って、円・ドルは当面横ばい圏を予想。その後は米景気が徐々に明るさを増し、金利差も多少拡大することで、半年後はやや円安ドル高になるとみる。

ユーロについては、危機対応は進んできたが、危機の本質である南欧の財政赤字が解決したわけではない。今後も緊迫化しやすい状態が続く。実体経済面でもユーロ圏経済の低迷は顕著だ。従って、当面ユーロは弱含みを予想。その後はリスク回避の巻き戻しで円に下落圧力が加わることから、半年後には現在と同程度になるとみる。

長期金利については、依然世界経済の下ぶれリスクが大きい中、金融機関の金余り構造もあり、基本的には低位安定が予想されるが、半年後は米金利の緩やかな上昇に伴って若干上昇するだろう。ただし、国内で山場を迎える財政健全化論議にて消費税棚上げのような事態となれば、財政懸念に伴う悪い金利上昇局面もあり得る。




経済研究部   上席エコノミスト

上野 剛志(うえの つよし)

研究領域:金融・為替

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

経歴

・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
・ 2007年 日本経済研究センター派遣
・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
・ 2009年 ニッセイ基礎研究所

・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)

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