貿易統計12年3月~1-3月期の外需寄与度はほぼゼロに

2012年04月19日

(斎藤 太郎) 日本経済

■見出し

・輸出が6ヵ月ぶりの増加
・米国向け輸出数量は震災前の水準を大きく上回る
・1-3月期の外需寄与度はほぼゼロに

■introduction

財務省が4月19日に公表した貿易統計によると、12年3月の貿易収支は▲826億円と2ヵ月ぶりの赤字となったが、事前の市場予想(QUICK集計:▲2,276億円、当社予想は▲1,797億円)を大きく上回った。輸出は前年比5.9%(2月:同▲2.7%)と6ヵ月ぶりの増加、輸入は前年比10.5%と2月の同9.2%から伸びを高めた。輸出は上中旬時点では前年比▲7.3%の減少となっていたが、下旬は前年比で30%を超える高い伸びとなった。これは、東日本大震災の影響で昨年の3月下旬から輸出が大きく落ち込んでいたことによる。3月の輸出を季節調整値で見ると、前月比1.2%(2月:同2.5%)の伸びにとどまっており、輸出が実勢として大きく加速したわけではない。
1-3月期の輸出数量指数を季節調整値(当研究所による試算値)で見ると、米国向けが前期比13.6%(10-12月期:同1.3%)、EU向けが前期比▲1.5%(10-12月期:同▲9.3%)、アジア向けが前期比4.8%(10-12月期:同▲2.8%)、全体では前期比0.5%(10-12月期:同▲1.7%)となった。景気悪化が鮮明となっているEU向けは低迷が続いているが、アジア向けが持ち直しつつあることに加え、米国経済の堅調と円高の修正を背景に米国向けが高い伸びとなり、輸出全体を押し上げる形となっている。米国向けの輸出数量(季節調整値)は東日本大震災前の水準をすでに大きく上回っている。
3月までの貿易統計と2月までの国際収支統計の結果を踏まえて、1-3月期の実質GDPベースの財貨・サービスの輸出入を試算すると、輸出、輸入ともに前期比2%程度の伸びとなることが見込まれる。この結果、1-3月期の外需寄与度は前期比でほぼゼロ%(10-12月期は同▲0.6%)となることが予想される。
当研究所では鉱工業生産、家計調査、建築着工統計等の結果を受けて、4/27のweeklyエコノミストレターで1-3月期の実質GDP成長率の予測を公表する予定である。現時点では、外需が成長率に対してほぼニュートラルとなる中、個人消費、公的固定資本形成を中心に内需が高めの伸びとなることから、前期比年率2%台のプラス成長を見込んでいる。

経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎(さいとう たろう)

研究領域:経済

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴

・ 1992年:日本生命保険相互会社
・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
・ 2019年8月より現職

・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2018年~ 統計委員会専門委員

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