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進むオフィスの省電力化―スマートオフィスに取り組むニッセイ基礎研究所
2012年04月04日
(松村 徹)
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2011年3月の東日本大震災に伴う原発事故以来、電力供給の不安定化や電気料金の引き上げリスクに直面している電力需要者(企業、消費者、地方自治体)の多くは、自律的かつ積極的に省エネ・節電に取り組み、東京電力の全原発が停止する中、2年目の夏を迎えようとしている。東京都の地球温暖化ガス排出量の部門別排出割合をみると、他の都市に比べ、工場など産業部門の割合が非常に小さく、業務部門と家庭部門が合わせて3分の2近くを占めるという特徴があり、オフィスビルや店舗、住宅での省エネ・節電努力が都市全体の電力需要抑制に大きな効果を持つことがわかる。
ニッセイ基礎研究所でも、賃借するビルの改修工事に伴うフロア移転を契機に、昨夏の貴重な経験とその後の知見を踏まえ、専用部内の省電力化に独自に取り組んだ。トイレや廊下など共用部の省エネ性や快適性はビルオーナーによる改修工事で向上したため、テナントとして目標としたのは、「ひたすら我慢する節電オフィス」ではなく、室内環境の快適性やオフィスワークの生産性を損なうことなく節電ができる「スマートオフィス」の実現である。
まず、発光ダイオード(LED)を使ったタスク(作業領域)&アンビエント(それ以外の周辺領域)照明器具を家具に設置することで、業務に必要な机上照度を確保しつつ、節電強化時には蛍光灯の既設天井照明の点灯を不要とした。これによって専有部の照明に関わる電気使用量は最大7割程度削減できると試算しているが、LED化で照明器具からの熱負荷の低減効果も期待できる。また、情報通信機器についても、PCを最新のシン・クライアント(Thin Client)システムに変更してセキュリティを強化するとともに大幅な省スペース化と省電力化を、また、分散していた複写機やファックス、プリンタを最新の複合機に集約することでも省スペース化と省電力化を試みた。
今回の実験的取り組みを行ってみて、(1)座席位置や季節、時間帯などによるきめ細かい制御が可能なLEDによる天井照明システムが既設されていれば、また(2)テナントの電力使用量が時間帯別や用途別、エリア別に詳細かつタイムリーに把握できれば(電力使用の「見える化(情報の可視化)」)、さらに(3)ビルオーナーやビル管理会社からの専門的な助言や提案があれば、スマートオフィス化はより容易に行えることを実感した。また、(4)このようなテナントによる取り組みが、最新の設備を持つビルだけでなく、既存ビルでも一定の成果が期待でき、ビルの省エネ改修時やオフィス移転時に合わせて実施すれば、より円滑に行える、と思われた。
3.11以前から、グローバル市場での生き残りをかけて合理化努力を続けてきた産業(生産)部門に対して、業務部門であるオフィスや店舗の本格的な生産性向上や省エネ化への取り組みは、まだ緒に就いたばかりといえる。電力供給の不安定化が常態化した現在、エネルギー利用の最適化のため、3.11以前の電気の使い方を大きく見直し、オフィスのスマート化を積極的に進めることが、生産性向上の切り札であるとともに、世界都市東京のビルオーナーやテナントに課せられた大きな責務でもある。
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松村 徹
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