鉱工業生産12年2月~予想を大きく下回るも、持ち直しが続く

2012年03月30日

(斎藤 太郎) 日本経済

■見出し

・市場予想を大きく下回り、3ヵ月ぶりの低下
・1-3月期は2四半期ぶりの増加が確実に

■introduction

経済産業省が3月30日に公表した鉱工業指数によると、12年2月の鉱工業生産指数は前月比▲1.2%と3ヵ月ぶりに低下し、事前の市場予想(QUICK集計:前月比1.3%、当社予想は同0.9%)を大きく下回った。在庫の積み上がりを背景に低調な動きが続いていた電子部品・デバイスは在庫調整の進展に伴い前月比6.9%の高い伸びとなったが、液晶テレビの販売減が続く情報通信機械が前月比▲8.9%と大きく落ち込み、好調を続けていた輸送機械が前月比▲2.6%と3ヵ月ぶりに低下するなど、速報段階で公表される16業種中、12業種が前月比で低下(4業種が上昇)した。
輸送機械は3ヵ月ぶりに低下したが、出荷指数は前月比4.1%の高い伸びとなっていること、米国向けを中心に輸出が持ち直していること、エコカー補助金再開や新車投入効果などから国内の自動車販売が好調であることなどから判断すると、回復基調は維持されていると考えられる。また、鉱工業全体で見ても生産指数が2ヵ月ぶりに低下(1月:前月比1.9%→2月:同▲1.2%)する一方、出荷指数は2ヵ月ぶりに上昇(1月:前月比▲0.9%→2月:同1.1%)しており、生産のヘッドラインの数字が示すほど実態は悪くない。1月、2月と均してみれば生産は昨年秋以降の足踏み状態を脱し、持ち直しの動きを続けていると判断される。
製造工業生産予測指数は、12年2月が前月比2.6%、3月が同0.7%となった。生産計画の修正状況を示す実現率(2月)、予測修正率(3月)はそれぞれ▲1.2%、▲0.2%なった。12年2月の生産指数を3月の予測指数で先延ばしすると、12年1-3月期の鉱工業生産は前期比3.6%の上昇となり、2四半期ぶりの増加となることは確実な情勢だ。円高修正や米国経済の底堅さなどを背景として輸出に明るい兆しが見られることもあり、生産は12年度入り後も持ち直しの動きが続くことが見込まれる。

経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎(さいとう たろう)

研究領域:経済

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴

・ 1992年:日本生命保険相互会社
・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
・ 2019年8月より現職

・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2018年~ 統計委員会専門委員

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