法人企業統計11年10-12月期~企業収益の低迷が続くなか、設備投資が急増し、10-12月期の成長率は大幅上方修正へ

2012年03月01日

(斎藤 太郎) 日本経済

■見出し

・3四半期連続の減益
・被災した生産設備の復旧から設備投資が急増
・10-12月期・GDP2次速報は大幅上方修正を予想

■introduction

財務省が3月1日に公表した法人企業統計によると、11年 10-12月期の全産業の経常利益は前年比▲10.3%(7-9月期:同▲8.5%)と3四半期連続の減少となり、減益幅は前期よりも拡大した。製造業の経常利益は東日本大震災が発生した11年1-3月期から4四半期連続で前年比二桁の減益となっており、減益幅は拡大を続けている(1-3月期:前年比▲12.5%→4-6月期:同▲15.3%→7-9月期:同▲18.7%→10-12月期:同▲21.5%)。10-12月期は円高、海外経済減速に伴う輸出の減少を主因として売上高の減少幅が7-9月期から拡大したことが響いた。非製造業の経常利益は前年比▲4.3%(7-9月期:同▲2.7%)であった。
設備投資(ソフトウェアを含む)は前年比7.6%(7-9月期:同▲9.8%)と3四半期ぶりに増加した。被災した生産設備の復旧、震災後に手控えられていた投資の再開が設備投資急増の要因と考えられる。ただし、先行きについては、復旧投資が引き続き押し上げ要因となることが見込まれる一方、輸出の低迷に伴う企業収益の悪化が下押し要因となるため、設備投資の回復ペースはいったん鈍化する可能性が高いだろう。
本日の法人企業統計の結果等を受けて、3/8公表予定の11年10-12月期GDP2次速報では、実質GDP成長率が前期比▲0.2%(前期比年率▲0.8%)となり、1次速報(前期比▲0.6%、年率▲2.3%)から大幅に上方修正されると予想する。
設備投資は1次速報では前期比1.9%と5四半期ぶりの増加となっていたが、2次速報では前期比5.1%と大幅に上方修正されるだろう。
なお、当研究所では7-9月期までの法人企業統計の設備投資は復旧投資の一部が修繕費としてコストに計上されていることなどから、実勢よりも弱めに出ている可能性があると指摘してきたが、他の設備投資関連統計の動きなどからすると10-12月期の急増も逆の意味で違和感がある。
今回の予測は現行の推計方法をもとにしたものであるが、内閣府が今回の2次速報で設備投資の推計方法を変更する可能性があることは念頭に置いておく必要があるだろう。実際、2008年4-6月期のGDP2次速報では、リース業の会計基準変更の影響で法人企業の設備投資に従来の方法では調整できないノイズが生じていることが明らかになったことを受けて、法人企業統計の発表後に設備投資の推計方法を変更した。
ただし、GDP速報の推計が恣意的なものとなることを避けるため、基礎統計が出揃った後の推計方法の変更は明確な根拠がある場合に限定すべきである。

経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎(さいとう たろう)

研究領域:経済

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴

・ 1992年:日本生命保険相互会社
・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
・ 2019年8月より現職

・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2018年~ 統計委員会専門委員

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