鉱工業生産11年12月~タイの洪水による悪影響が解消され、予想を上回る高い伸びに

2012年01月31日

(斎藤 太郎) 日本経済

■見出し

・11年10-12月期の生産は前期比▲0.4%
・12年1-3月期は再び増産へ

■introduction

経済産業省が1月31日に公表した鉱工業指数によると、11年12月の鉱工業生産指数は前月比4.0%と2ヵ月ぶりに上昇し、事前の市場予想(QUICK集計:前月比2.9%、当社予想は同3.3%)を上回った。
12月の生産を業種別に見ると、タイの洪水による悪影響が解消に向かっていることから、11月に急速に落ち込んだ輸送機械(11月:前月比▲10.0%→12月:同12.3%)、情報通信機械(11月:前月比▲23.7%→12月:同34.8%)が非常に高い伸びとなり指数全体を大きく押し上げた。
11年10-12月期の生産は前期比▲0.4%と2四半期ぶりに低下した。業種別には、輸送機械はタイの洪水による部品不足の影響を受けたものの、国内販売の堅調などから前期比6.1%と増産を維持したが、情報通信機械がタイの洪水による部品不足に、地上デジタル放送移行前の駆け込み需要の反動による液晶テレビの国内販売の落ち込みが重なったことから前期比▲21.1%の急低下となったほか、世界的なIT関連分野の在庫調整の影響から電子部品・デバイスが前期比▲4.1%と3四半期連続の低下となった。
製造工業生産予測指数は、12年1月が前月比2.5%、2月が同1.2%となった。生産計画の修正状況を示す実現率(12月)、予測修正率(1月)はそれぞれ0.4%、▲0.4%であった。円高の進展、海外経済の下振れ、タイの洪水の影響から昨年夏場以降、生産計画の下方修正が続いてきたが、タイの洪水による悪影響が解消に向かいつつあることで下振れの流れに歯止めがかかる形となった。
11年12月の生産指数を12年1月、2月の予測指数で先延ばし(3月は横ばいと仮定)すると、12年1-3月期の鉱工業生産は前期比5.1%の上昇となる。輸出の下振れに伴い生産計画が大きく下方修正されるリスクはあるものの、現時点では1-3月期は再び前期比で増加となることが見込まれる。

経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎(さいとう たろう)

研究領域:経済

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴

・ 1992年:日本生命保険相互会社
・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
・ 2019年8月より現職

・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2018年~ 統計委員会専門委員

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