貿易統計11年9月~7-9月期の外需寄与度は前期比0.5%程度のプラスに

2011年10月24日

(斎藤 太郎) 日本経済

■見出し

・貿易収支(季節調整値)は6ヵ月連続の赤字
・アジア向けの輸出が伸び悩み
・7-9月期の外需寄与度は前期比0.5%程度のプラスに

■introduction

財務省が10月24日に公表した貿易統計によると、9月の貿易収支は3,004億円と2ヵ月ぶりの黒字となり、事前の市場予想(QUICK集計:2,174億円、当社予想は2,028億円)を若干上回った。8月に6ヵ月ぶりに前年比で増加に転じた輸出は伸びが若干鈍化した(8月:前年比2.8%→9月:同2.4%)が、輸入の伸びが8月の前年比19.2%から同12.1%へと大きく鈍化したことが貿易収支の改善に寄与した。
貿易収支は原数値では2ヵ月ぶりの黒字となったが、貿易収支には季節性があるため、基調を判断するためには季節調整値を用いることが適切である。9月の貿易収支を季節調整値で見ると、▲218億円(8月は▲2,652億円の赤字)と6ヵ月連続の赤字となった。赤字幅は大きく縮小したものの、基調としては依然として貿易赤字が続いており、貿易赤字の継続期間はリーマン・ショック後(08/10~09/3)に並んだ。
先行きについては、国内のサプライチェーン復旧に伴う急速なリバウンドの局面が終了しつつある中、円高や海外経済減速の影響が顕在化することから、輸出の回復ペースは鈍化する可能性が高い。一方、輸入は燃料費増加の影響などから高めの伸びが続くことが見込まれるため、貿易収支(季節調整値)は当面はゼロ近傍の動きが続くことが予想される。
輸出の内訳を数量、価格に分けてみると、輸出数量が前年比1.7%(8月:同0.9%)、輸出価格が前年比0.7%(8月:同1.9%)であった。輸入の内訳は、輸入数量が前年比0.9%(8月:同6.0%)、輸入価格が前年比11.1%(8月:同12.4%)であった。

経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎(さいとう たろう)

研究領域:経済

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴

・ 1992年:日本生命保険相互会社
・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
・ 2019年8月より現職

・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2018年~ 統計委員会専門委員

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