欧州経済見通し~懸念される財政-金融-景気の悪循環~

2011年09月09日

(伊藤 さゆり) 欧州経済

  1. ユーロ圏の成長は大きく鈍化し、ギリシャの財政を巡る不安の長期化で、スペイン、イタリアなどの財政への圧力が強まるとともに、中核国も含めて銀行のバランス・シートが劣化、財政-金融-景気の悪循環のスパイラルに陥る懸念が広がっている。
  2. 政策対応次第で深刻な景気後退に至るリスクは高まるが、メインシナリオでは底割れは回避、2012年半ば以降、世界経済の持ち直しやインフレ沈静化、マインド改善効果から緩やかに回復すると予測する。ECBは利上げを休止、非標準的手段による市場の下支えを継続する見込みである。
  3. イギリスも家計と政府のバランス・シート調整という内的要因と外部環境悪化の影響で低成長が続く。BOEは超低金利政策を長期にわたり維持、景気の想定以上の下振れや金融市場の緊張が著しく高まった場合は量的緩和の上限の再引き上げに動くだろう。



経済研究部   常務理事

伊藤 さゆり(いとう さゆり)

研究領域:経済

研究・専門分野
欧州の政策、国際経済・金融

経歴

・ 1987年 日本興業銀行入行
・ 2001年 ニッセイ基礎研究所入社
・ 2023年7月から現職

・ 2011~2012年度 二松学舎大学非常勤講師
・ 2011~2013年度 獨協大学非常勤講師
・ 2015年度~ 早稲田大学商学学術院非常勤講師
・ 2017年度~ 日本EU学会理事
・ 2017年度~ 日本経済団体連合会21世紀政策研究所研究委員
・ 2020~2022年度 日本国際フォーラム「米中覇権競争とインド太平洋地経学」、
           「欧州政策パネル」メンバー
・ 2022年度~ Discuss Japan編集委員
・ 2023年11月~ ジェトロ情報媒体に対する外部評価委員会委員
・ 2023年11月~ 経済産業省 産業構造審議会 経済産業政策新機軸部会 委員

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