米国債初めての格下げ(8/5)、G7緊急声明(8/8)で市場の混乱回避をねらう

2011年08月08日

(矢嶋 康次) 金融市場・外国為替(通貨・相場)

■見出し

・米国債格下げ、最上級の地位を失う
・ある程度織り込んでいた+流動性から大きな変化もないかもしれないが、実現した格下げへの動揺は、初めてのことでよくわからない。日本にとっては株安・円高材料
・G7は緊急声明で、協調を演出、市場混乱の封じ込めに躍起
・世界が抱える構造問題の解決にはまだまだ時間がかかる、日本も対岸の火事ではすまされない

■introduction

スタンダード&プアーズ(SP)が5日、米国債を格下げした。長期信用格付けを最上級の「AAA」から「AAプラス」に1段階引き下げ、さらに見通しを「ネガティブ」とし、今後さらなる格下げが行われる可能性も指摘した。
オバマ大統領が8月2日に署名した債務上限引き上げ法案は今後10年間で2.1兆円の財政赤字削減計画が織り込まれた。しかし、当初からSPは財政赤字削減には4兆ドル必要との見解を示しており、両者にはギャップが存在していた。SPが米国債を格下げするのは1941年の現行制度開始以来はじめて。米国債の格付けは、英国やドイツ、フランスなどを下回ることになる。なお、ムーディーズは2日、米国債をAaaで維持は発表、フィッチも最上位で据え置くと公表していた。

総合政策研究部   常務理事 チーフエコノミスト・経済研究部 兼任

矢嶋 康次(やじま やすひで)

研究領域:金融・為替

研究・専門分野
金融財政政策、日本経済 

経歴

・ 1992年 :日本生命保険相互会社
・ 1995年 :ニッセイ基礎研究所へ
・ 2021年から現職
・ 早稲田大学・政治経済学部(2004年度~2006年度・2008年度)、上智大学・経済学部(2006年度~2014年度)非常勤講師を兼務
・ 2015年 参議院予算委員会調査室 客員調査員

第54回 エコノミスト賞(毎日新聞社主催)受賞 『非伝統的金融政策の経済分析』

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