第二次ギリシャ支援を巡るユーロ圏臨時首脳会議とEU銀行特別検査(ストレス・テスト)の評価

2011年07月22日

(伊藤 さゆり) 欧州経済

  1. 21日に開催された臨時ユーロ圏首脳会議でギリシャに対する公的支援1090億ユーロ、民間負担500億ユーロの第二次支援と危機の伝播に歯止めをかけるEFSFの強化策で合意した。支援の金利、返済期限はポルトガル、アイルランドも含めて緩和、EFSF増枠は見送られたが、予防的融資枠、国債流通市場への介入等の新機能が付加される。
  2. 15日公表の第3回のEUの銀行特別検査(ストレス・テスト)は不合格行8行、資本不足額25億ユーロという結果であった。残存期間別の国債保有額や民間部門向けの債権額などの開示データから伝播のリスクが確認できるようになった意味は大きい。
  3. 今回の首脳会議におけるギリシャ支援とEFSF強化に関する合意は、ギリシャ支援を巡る調整の難航で危機がイタリアに波及し、伝播のリスクを封じ込めなければ問題解決のコストが膨らみ続けるとの危機意識が共有された結果である。
  4. 今回の決定がただちに債務問題解決につながることはないが、危機拡大に歯止めをかける一定の効果は果たすだろう。



経済研究部   常務理事

伊藤 さゆり(いとう さゆり)

研究領域:経済

研究・専門分野
欧州の政策、国際経済・金融

経歴

・ 1987年 日本興業銀行入行
・ 2001年 ニッセイ基礎研究所入社
・ 2023年7月から現職

・ 2011~2012年度 二松学舎大学非常勤講師
・ 2011~2013年度 獨協大学非常勤講師
・ 2015年度~ 早稲田大学商学学術院非常勤講師
・ 2017年度~ 日本EU学会理事
・ 2017年度~ 日本経済団体連合会21世紀政策研究所研究委員
・ 2020~2022年度 日本国際フォーラム「米中覇権競争とインド太平洋地経学」、
           「欧州政策パネル」メンバー
・ 2022年度~ Discuss Japan編集委員
・ 2023年11月~ ジェトロ情報媒体に対する外部評価委員会委員
・ 2023年11月~ 経済産業省 産業構造審議会 経済産業政策新機軸部会 委員

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