貿易統計11年6月~4-6月期の外需寄与度は前期比▲0.7%程度のマイナスに

2011年07月21日

(斎藤 太郎) 日本経済

■見出し

・貿易収支は原数値では 3ヵ月ぶりの黒字だが、季節調整値では3ヵ月連続の赤字
・7月以降は貿易収支の改善ペースがいったん鈍化する可能性
・4-6月期の外需寄与度は前期比▲0.7%程度のマイナスに

■introduction

財務省が7月21日に公表した貿易統計によると、6月の貿易収支は707億円の黒字となった。貿易黒字は3ヵ月ぶりで、事前の市場予想(QUICK 集計:▲1,482億円、当社予想は▲1,753億円)を上回る結果であった。サプライチェーンの復旧に伴う国内生産の持ち直しを主因として輸出が前年比▲1.6%と前月の同▲10.3%から減少幅が大きく縮小する一方、輸入は前年比9.8%(5月:同12.3%)と前月から伸びが鈍化した。
6月の輸出入を旬別に分けてみると、輸出は上旬:前年比▲1.3%→中旬:同▲6.6%→下旬:同2.5%となった。旬ベースの輸出がプラスとなったのは3月上旬以来であり、輸出の回復傾向が鮮明となっている。輸入は上旬:前年比10.2%→中旬:同11.8%→下旬:同7.7%となった。
輸出の内訳を数量、価格に分けてみると、輸出数量が前年比▲2.6%(5月:同▲10.8%)、輸出価格が前年比1.1%(5月:同0.5%)であった。輸入の内訳は、輸入数量が前年比1.7%(5月:同5.5%)、輸入価格が前年比8.0%(5月:同6.5%)であった。
貿易収支は原数値では黒字となったものの、貿易収支には季節性があるため、基調を判断するためには季節調整値を用いることが適切である。過去のデータを用いて貿易収支の季節性を見てみると、4月、5月は原数値の貿易収支が赤字になりやすく、6月は黒字になりやすい月であることが分かる。6月の貿易収支を季節調整値で見ると、▲1,912億円(5月は▲4,500億円の赤字)と3ヵ月連続の赤字となっている。貿易収支の赤字幅は縮小したものの、6月の時点で貿易収支が赤字を脱したとは言えない。

経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎(さいとう たろう)

研究領域:経済

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴

・ 1992年:日本生命保険相互会社
・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
・ 2019年8月より現職

・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2018年~ 統計委員会専門委員

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