貿易赤字はいつまで続くのか

2011年07月15日

(斎藤 太郎) 日本経済

  1. 東日本大震災発生以降、貿易収支は急速に悪化し、2011年4月、5月と2ヵ月連続で赤字となった。貿易赤字の主因は、震災後の供給制約によって輸出が大幅に落ち込んだことだが、サプライチェーンの復旧が進む中、国内生産が回復に転じていることを受けて、輸出はすでに持ち直しの動きが明確となりつつある。
  2. 7/21に公表される6月の貿易統計では、貿易収支の赤字幅が縮小することが見込まれるが、7月以降は電力不足の影響で鉱工業生産が低迷し、これに伴い輸出も伸び悩む可能性が高い。
  3. 貿易収支が赤字を脱するのは2011年10-12月期となるだろう。電力不足の問題が一段落する10月以降、鉱工業生産、輸出ともに再び伸びが加速し、震災前の水準を回復することが予想されるためである。
  4. 貿易赤字が長期化するリスクとしては、海外経済の悪化や円高の進展による輸出の低迷、原油高による輸入の大幅増などが挙げられる。一方、電力不足の問題が軽微にとどまり、夏場の生産が好調を維持した場合には、貿易収支の黒字化は7-9月期に早まるだろう。国内生産活動の正常化が貿易赤字脱却の条件となりそうだ。



経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎(さいとう たろう)

研究領域:経済

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴

・ 1992年:日本生命保険相互会社
・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
・ 2019年8月より現職

・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2018年~ 統計委員会専門委員

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