H1N1型インフルエンザ流行を振り返って

2011年06月24日

(村松 容子) 医療

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2011年3月31日、H1N1型のインフルエンザ(以下H1N1型と記す)の感染症法上の分類が「新型インフルエンザ」から「季節性インフルエンザ」に移され、サーベイランス等の監視体制が緩和された。季節性インフルエンザへの移行は、流行が沈静化したこと、国民の一定数がH1N1型に対する免疫を獲得したと考えられること、インフルエンザ患者の中にH1N1型以外のウイルスも検出されていること、重症患者が季節性インフルエンザと同様に高齢層に移っていること等による。
H1N1型の流行では、流行開始時期と流行期間とに特徴が見られる。H1N1型が流行した2009年は、通常の季節性インフルエンザの流行がおさまった5月に、国内初のH1N1型の患者が報告され、通常の季節性インフルエンザより数か月早い8月後半に流行期に入った。流行ピーク時の患者数は例年の季節性インフルエンザ並であったが、流行期間は例年と比べて長く、患者総数は推計2,077万人と1987年に定点調査が始まって以来最大となった。
しかし、健康被害が季節性インフルエンザや諸外国におけるH1N1型と比べて大きかったわけではない。2,077万人という患者数は季節性インフルエンザと比べてやや多い程度で、死亡数は約200人余りと、季節性インフルエンザと比べて少なかった。諸外国と比べても、国内初の患者が出てから流行開始まで3か月も経過しているなど拡散スピードは遅く、日本でのH1N1型による死亡率は、諸外国と比べて低い。
諸外国と比べて健康被害が少なかった理由として、医療の充実、早期のタミフル投与、早めの学級閉鎖等による拡散抑制があげられている。ただし、ワクチンの接種や外来診療受付の混乱、企業のBCPなどが反省点として指摘されている。
H1N1型は沈静化したが、今後、毒性が強いとされるH5N1型インフルエンザの流行の可能性もある。今回の成功と反省を活かした対応が望まれる。

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