景気は震災後の最悪期を脱するも、先行きは依然不透明

2011年05月13日

(斎藤 太郎) 日本経済

  1. 東日本大震災の影響により、3月の経済指標は鉱工業生産が過去最大の落ち込みとなるなど軒並み大きく悪化した。しかし、製造業の生産計画は4月には増加に転じており、4月の景気ウォッチャー調査では、現状判断DI、先行き判断DIがともに改善した。景気がリーマン・ショック後のようにスパイラル的に悪化するリスクはここにきて低くなっていると判断される。
  2. 景気が震災後の最悪期を脱しつつあることは、経済活動との連動性が高い電力需要の推移からも確認できる。電力需要は3/11の震災直後から東北電力、東京電力管内を中心に大きく落ち込み、4月中旬には全国でも前年比で二桁のマイナスとなった。しかし、4月下旬以降は徐々に持ち直しに向かっており、足もとではマイナス幅が5%程度まで縮小している。
  3. 景気ウォッチャー調査の先行き判断DIは、4月には過去最大の改善幅を記録したが、期待先行の面が強いと考えられることに加え、もともと先行き判断DIの景気への先行性は高くない。足もとの景気は下げ止まりつつあるが、先行きについては依然として不透明感が強い。



経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎(さいとう たろう)

研究領域:経済

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴

・ 1992年:日本生命保険相互会社
・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
・ 2019年8月より現職

・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2018年~ 統計委員会専門委員

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