欧州金融安定ファシリティーの強化と競争力協定~妥協点を探り、3月決着へ

2011年02月18日

(伊藤 さゆり) 欧州経済

  1. EU・IMFの支援下のギリシャ、アイルランド経済の状況は、ポルトガルに、支援下に入れば却って成長が阻害され債務問題の解決が遅れるとの不安を抱かせる。
  2. ユーロ参加国首脳とEU機構は、2月4日のEU首脳会合で危機拡大の抑止力として期待される金融安定ファシリティー(EFSF)の強化について、金融安定と危機克服の「包括的戦略」の一環として3月の最終決着を目指すことで合意した。
  3. 支援強化の条件としてドイツがフランスとともに提案した「競争力協定」には反発もあり、EFSFの機能拡充は期待先行の感がある。経済政策の規律と支援強化の妥協点を探った結果は十分なものではないにせよ、新たな制度とルールを活用した問題解決に取り組むことが望まれる。
  4. ユーロ圏周辺国が陥っている財政と金融の悪循環を断ち切るには、昨年の失敗を教訓にストレステストを活用した金融セクター健全化の具体的成果を挙げることも重要だ。




経済研究部   常務理事

伊藤 さゆり(いとう さゆり)

研究領域:経済

研究・専門分野
欧州の政策、国際経済・金融

経歴

・ 1987年 日本興業銀行入行
・ 2001年 ニッセイ基礎研究所入社
・ 2023年7月から現職

・ 2011~2012年度 二松学舎大学非常勤講師
・ 2011~2013年度 獨協大学非常勤講師
・ 2015年度~ 早稲田大学商学学術院非常勤講師
・ 2017年度~ 日本EU学会理事
・ 2017年度~ 日本経済団体連合会21世紀政策研究所研究委員
・ 2020~2022年度 日本国際フォーラム「米中覇権競争とインド太平洋地経学」、
           「欧州政策パネル」メンバー
・ 2022年度~ Discuss Japan編集委員
・ 2023年11月~ ジェトロ情報媒体に対する外部評価委員会委員
・ 2023年11月~ 経済産業省 産業構造審議会 経済産業政策新機軸部会 委員

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