鉱工業生産10年8月~生産は調整局面へ

2010年09月30日

(斎藤 太郎) 日本経済

■見出し

・生産指数は3ヵ月連続で低下
・7-9月期は6四半期ぶりの減産へ

■introduction

経済産業省が9月30日に公表した鉱工業指数によると、8月の鉱工業生産指数は前月比▲0.3%と3ヵ月連続で低下し、事前の市場予想(ロイター集計:前月比1.1%、当社予想は同1.0%)を大きく下回った。出荷指数は前月比▲0.5%と2ヵ月連続の低下、在庫指数は前月比0.7%と2ヵ月ぶりの上昇となった。
8月の生産を業種別に見ると、設備投資の持ち直しを受けて好調を続けてきた一般機械が前月比▲1.1%と5ヵ月ぶりに低下したほか、中国向けを中心とした輸出の鈍化傾向を反映し、鉄鋼が前月比▲1.3%と5ヵ月連続で低下した。在庫積み上がりから低下傾向が続いていた情報通信機械は前月比1.1%と3ヵ月ぶりに上昇したが、在庫指数は前月比6.6%(前年比では100.6%)と大幅な積み上がりが続いている。
速報段階で公表される16業種中、10業種が前月比で上昇、5業種が低下(横ばいが1業種)となった。上昇業種数が低下業種数を上回ったが、生産ウェイトの高い一般機械が低下したことが指数全体を押し下げた。
財別の出荷動向を見ると、設備投資のうち機械投資の一致指標である資本財出荷(除く輸送機械)は前月比▲1.4%の低下となったが、7月、8月の平均は4-6月期よりも2.0%高い水準にある。GDP統計の設備投資は09年10-12月期以降、3四半期連続で増加しているが、7-9月期も増勢が維持される可能性が高い。
消費財出荷指数は前月比2.0%と3ヵ月連続で上昇した。猛暑によってエアコンの売れ行きが好調だったことから、耐久財が前月比2.9%の高い伸びとなった。
耐久消費財は政策効果一巡に伴い4-6月期には前期比▲1.7%と5四半期ぶりに低下したが、エコカー補助金終了前の自動車の駆け込み需要や猛暑によるエアコン販売の好調などから、7-9月期は高めの伸びとなることが見込まれる。
さらに、9月にはたばこ値上げ前の駆け込み需要が加わるため、7-9月期のGDPベースの個人消費は高い伸びとなることが予想される。

経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎(さいとう たろう)

研究領域:経済

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴

・ 1992年:日本生命保険相互会社
・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
・ 2019年8月より現職

・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2018年~ 統計委員会専門委員

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