鉱工業生産10年6月~生産の減速傾向が鮮明に

2010年07月30日

(斎藤 太郎) 日本経済

■見出し

・4-6月期の生産は前期比1.4%
・一部の業種に在庫積み上がりの動き
・7-9月期は6四半期ぶりに減産の可能性も

■introduction

経済産業省が7月30日に公表した鉱工業指数によると、6月の鉱工業生産指数は前月比▲1.5%と4ヵ月ぶりに低下し、事前の市場予想(ロイター集計:前月比0.2%、当社予想は同▲0.4%)を大きく下回った。出荷指数は前月比▲0.2%と2ヵ月連続の低下、在庫指数は前月比0.7%と3ヵ月連続の上昇となった。
6月の生産を業種別に見ると、設備投資の持ち直しを反映し一般機械が前月比1.8%と3ヵ月連続で上昇したが、これまで生産の牽引役となっていた輸送機械が5月の前月比▲2.7%に続き、同▲3.0%と大きく落ち込むなど、速報段階で公表される16業種中、12業種が前月比で低下した(上昇は2業種、横ばいが2業種)。
4-6月期の生産は前期比1.4%と5四半期連続の上昇となったが、1-3月期の同7.0%からは伸びが大きく低下した。リーマン・ショック後の急速な落ち込みの一部が季節性によるものと認識されているという季節調整の歪みにより1-3月期は実勢よりも高めに、4-6月期は低めの伸びとなっている可能性はあるが、その影響を考慮しても生産が減速局面に入ったことは確かだろう。
業種別には設備投資の持ち直しを反映し、一般機械が前期比12.5%と1-3月期の同16.6%に続き高い伸びとなり、4-6月期の生産増のほとんどが一般機械によるものとなった。一方、輸送機械が前期比▲1.8%と5四半期ぶりに低下したほか、液晶テレビなど在庫積み上がりに伴い在庫調整の動きが見られた情報通信機械が前期比▲7.3%と大きく落ち込んだ。1-3月期は16業種全てが前期比で上昇したが、4-6月期の上昇業種は7業種にとどまり、業種別にばらつきが見られる形となった。

経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎(さいとう たろう)

研究領域:経済

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴

・ 1992年:日本生命保険相互会社
・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
・ 2019年8月より現職

・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2018年~ 統計委員会専門委員

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