鉱工業生産10年5月~鉱工業生産は減速局面へ

2010年06月29日

(斎藤 太郎) 日本経済

■見出し

・生産指数は3ヵ月ぶりの低下
・4-6月期も増産見込みだが、伸び率は大きく低下へ

■introduction

経済産業省が6月29日に公表した鉱工業指数によると、5月の鉱工業生産指数は前月比▲0.1%と3ヵ月ぶりに低下し、ほぼ事前の市場予想(ロイター集計:前月比0.0%、当社予想も同0.0%)通りの結果となった。出荷指数は前月比▲1.7%と3ヵ月ぶりの低下、在庫指数は前月比2.0%と2ヵ月連続の上昇となった。
5月の生産を業種別に見ると、在庫調整に伴い大幅な減産が続いていた情報通信機械が前月比5.5%と4ヵ月ぶりに上昇するなど、速報段階で公表される16業種中10業種が前月比で上昇(6業種が低下)したが、これまで生産の牽引役となってきた輸送機械が前月比▲2.7%と大幅に低下したことが生産全体の足を引っ張った。
財別の出荷動向を見ると、設備投資のうち機械投資の一致指標である資本財出荷(除く輸送機械)は前月比▲5.0%となったが、4月に前月比4.4%の高い伸びとなった反動によるもので、4月、5月の平均は1-3月期よりも5.7%高い水準となっている。また、建設投資の一致指標である建設財出荷は1-3月期の前期比3.4%の後、4月が前月比3.1%、5月が同3.5%となり、4月、5月の平均は1-3月期よりも2.0%高い水準となっている。
GDP統計の設備投資は09年10-12月期が前期比1.1%、10年1-3月期が同0.6%と2四半期連続で増加したが、4-6月期も回復傾向が続いていると考えられる。
一方、消費財出荷指数は1-3月期の前期比2.4%の後、4月が前月比▲0.6%、5月が同▲1.1%と弱含みの動きとなっている。特に、エコカー減税・補助金、エコポイント制度といった政策効果から好調を続けてきた耐久消費財が4月の前月比▲3.6%に続き、5月も同▲2.4%の大幅低下となった。ここにきて政策効果が一巡しつつあることを反映した動きと言えるだろう。

経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎(さいとう たろう)

研究領域:経済

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴

・ 1992年:日本生命保険相互会社
・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
・ 2019年8月より現職

・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2018年~ 統計委員会専門委員

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