鉱工業生産10年3月~裾野の拡がりを見せる生産の回復

2010年04月30日

(斎藤 太郎) 日本経済

■見出し

・1-3月期は前期比6.7%
・4-6月期も増産継続の見込み

■introduction

経済産業省が4月30日に公表した鉱工業指数によると、3月の鉱工業生産指数は前月比0.3%と2ヵ月ぶりに上昇したが、事前の市場予想(ロイター集計:前月比0.8%、当社予想は同0.3%)は若干下回った。出荷指数が前月比1.6%と高めの伸びとなる一方、在庫指数が前月比▲1.6%と3ヵ月ぶりに低下したため、在庫率指数は前月比▲5.2%と大きく低下した。
3月の生産を業種別に見ると、輸出の好調を受けて輸送機械が前月比1.8%、鉄鋼が同3.1%の上昇となったが、設備投資の持ち直しから回復が続いていた一般機械が前月比▲4.0%と8ヵ月ぶりに低下したほか、液晶テレビを中心とした在庫調整の動きから情報通信機械は前月比▲4.7%と2ヵ月連続で低下した。速報段階で公表される16業種中、9業種が前月比で上昇、7業種が低下となった。
1-3月期の生産は前期比6.7%と4四半期連続の上昇となり、10-12月期の同5.9%から伸びが高まった。業種別には、設備投資の持ち直しを反映し一般機械が前期比16.5%と16業種中最も高い伸びとなったほか、好調な輸出を背景として鉄鋼(前期比13.8%)、輸送機械(前期比16.2%)も前期比二桁の伸びとなった。1-3月期は16業種全てが前期比で上昇しており(4-6月期は11業種、7-9月期は13業種、10-12月期は15業種)、生産の回復は裾野の拡がりを伴ったものとなってきた。
1-3月期の在庫循環図を確認すると、10-12月期の「意図せざる在庫減少局面」から「在庫積み増し局面」へと移行した。前年の水準が極めて低かったこともあり、出荷が前年比26.4%と急増する一方、在庫の減少幅が10-12月期(末)の前年比▲14.6%から同▲6.0%へと縮小した。
財別の出荷動向を見ると、設備投資のうち機械投資の一致指標である資本財出荷(除く輸送機械)は09年10-12月期に前期比4.9%となった後、10年1-3月期は同14.0%と伸びが急加速した。建設投資の一致指標である建設財出荷は10-12月期の前期比▲1.2%から1-3月期は同3.4%の上昇に転じた。GDP統計の設備投資は09年10-12月期に前期比0.9%と7四半期ぶりに増加に転じたが、1-3月期は伸びが加速する可能性が高いだろう。
消費財出荷指数は10-12月期の前期比4.9%の後、1-3月期は同1.9%と4四半期連続で上昇した。エコカー減税・補助金、エコポイント制度といった政策効果から耐久消費財が前期比9.1%(10-12月期:同8.8%)と高い伸びを続けたが、非耐久消費財は前期比▲3.7%(10-12月期:同0.3%)と4四半期ぶりに低下した。

経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎(さいとう たろう)

研究領域:経済

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴

・ 1992年:日本生命保険相互会社
・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
・ 2019年8月より現職

・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2018年~ 統計委員会専門委員

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