10-12月期の実質成長率の予測を前期比年率4.1%に下方修正~季節調整方法の変更を反映

2010年02月08日

(斎藤 太郎) 日本経済

■見出し

・10-12月期の成長率予測を年率5.2%から4.1%へ下方修正
・今回の変更には問題点も

■introduction

当研究所では、1/29に09年10-12月期の実質GDP成長率の予測値を前期比1.3%(年率5.2%)と発表した(Weeklyエコノミスト・レター 2010-01-29参照)。その後、内閣府が2/3に季節調整方法の変更を発表したことを受けて、あらためて予測を行ったところ、実質GDP成長率の予測値は前期比1.0%(年率4.1%)となり、1/29時点の前期比1.3%(年率5.2%)から下方修正となった。また、名目GDP成長率の予測値も前期比1.0%(年率3.9%)から前期比0.8%(年率3.2%)へと下方修正した。
変更があったのは、財貨の輸出、財貨の輸入に関する季節調整方法である。08年秋のリーマン・ショック以降、輸出入は急激な落ち込みを記録したが、内閣府が昨年12月に公表した季節調整モデルでは、財貨の輸出入について、異常値・レベルシフトの調整は行われていなかった。季節調整モデルの見直しは原則として年1回(12月の7-9月期2次速報時)となっているが、今回は通常とは異なるタイミングの10-12月期1次速報時に季節調整法の設定を変更し、異常値・レベルシフトの調整、ARIMAモデルの再設定を行うと発表された。
2/3の内閣府の公表資料では、季節調整法の変更によって輸出入の季節調整パターンが過去に遡って大きく修正されることが示されており(ただし、季節調整値の実数は非公表)、09年10-12月期についても従来の方法による季節調整値とは大きく異なる可能性が高くなった。
新しい季節調整方法にもとづいて季節調整をかけなおした結果、財貨・サービスの輸出の予測を1/29時点の前期比4.8%から同4.6%へ下方修正、財貨・サービスの輸入を前期比1.5%から同3.3%へ上方修正、外需寄与度を前期比0.5%から同0.3%へと下方修正した。
なお、輸出入の予測値の修正には季節調整方法の変更以外に本日(2/8)公表された12月の国際収支統計の結果を反映した影響も含まれている。
また、民間消費の予測値を1/29時点の前期比0.6%から同0.5%へと若干下方修正したが、これは2/5に公表された12月の家計消費状況調査の結果が想定よりも弱かったことによるものである。
このように、10-12月期は従来の予測よりも低めの成長となることが見込まれるが、4-6月期、7-9月期については、逆に上方修正されることが予想される(当研究所では4-6月期が前期比年率2.7%から同4.9%へ、7-9月期が前期比年率1.3%から同2.4%へ修正されると予想)。この結果、10-12月期1次速報の公表時には、日本経済は09年度入り後、3四半期にわたって潜在成長率を大きく上回る高成長を続けていたという姿が示されることになりそうだ。

経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎(さいとう たろう)

研究領域:経済

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴

・ 1992年:日本生命保険相互会社
・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
・ 2019年8月より現職

・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2018年~ 統計委員会専門委員

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