法人企業統計09年7-9月期~企業収益は持ち直すも、設備投資は低調

2009年12月03日

(斎藤 太郎) 日本経済

■見出し

・経常利益の水準はピーク時の4割強まで戻す
・設備投資は製造業を中心に低調
・7-9月期・GDP2次速報は下方修正を予測

■introduction

財務省が12月3日に公表した法人企業統計によると、09年7-9月期の全産業(金融業、保険業を除く、以下同じ)の経常利益は前年比▲32.4%(09年4-6月期:同▲53.0%)と、9四半期連続の減少となった。
引き続き大幅な減益となったが、原油をはじめとした資源価格の下落に伴う変動費の大幅な減少(4-6月期:前年比▲17.5%→7-9月期:同▲17.3%)が続く中、輸出の持ち直しに伴い売上高の減少ペースが緩やかとなった(4-6月期:前年比▲17.0%→7-9月期:同▲15.7%)ため、減益幅は2四半期連続で縮小した。10-12月期は前年の水準が極めて低かったこともあり、増益に転じる可能性が高いだろう。
製造業が前年比▲69.3%(4-6月期:同▲89.2%)、非製造業が前年比▲7.8%(4-6月期:同▲26.4%)であった。
季節調整済の経常利益は7.1兆円(製造業:1.0兆円、非製造業:6.1兆円)となり、前期比では2四半期連続で増加した(4-6月期は5.6兆円)。経常利益の水準は1-3月期には直近のピーク時(07年1-3月期の16.0兆円)の3割程度にまで落ち込んだが、7-9月期には4割強まで回復した。製造業の経常利益(季節調整値)は3四半期ぶりに黒字となった。
売上高経常利益率は全産業ベースで2.2%となり、前年に比べ▲0.5ポイントの悪化となった(4-6月期は▲1.9ポイントの悪化)。製造業は前年差▲2.1ポイント(4-6月期は同▲5.0ポイント)と9四半期連続で悪化したが、非製造業は前年差0.2ポイントと5四半期ぶりに改善した。売上の減少は続いているが、原材料価格の低下を主因として変動費が大幅に減少していることが利益率の改善につながった。製造業の利益率も悪化幅は2四半期連続で縮小した。
経常利益の内訳を業種別に見ると、製造業は18業種中6業種が赤字(原数値)となった(4-6月期は18業種中8業種が赤字)。国内外の自動車購入促進策の効果で国内販売、輸出ともに回復していることを反映し、輸送用機械は4四半期ぶりに黒字に転じ、食料品(前年比▲3.4%)、化学(前年比▲2.5%)は減益幅が大きく縮小した。一方、鉄鋼、電気機械、情報通信機械などは引き続き赤字となっており、収益の改善は一部の業種に偏る傾向が見られる。
非製造業では、原油価格下落の効果から1-3月期に6四半期ぶりに黒字に転じた電気が3四半期連続で黒字となったほか、建設業が2四半期ぶりの黒字となった。一方、卸・小売業(前年比▲19.9%)、運輸・郵便業(前年比▲29.1%)は引き続き前年比二桁の減益となっている。
労働分配率(当研究所による季節調整値)は69.1%となった。2四半期連続で低下し、過去最高水準となった1-3月期の72.2%からは3ポイント程度低下しているが、依然として歴史的高水準にある。製造業は4-6月期の74.0%から68.1%へと低下したが、非製造業は4-6月期の68.3%から68.5%へと若干上昇した。
失業率が過去最悪を記録した後、3ヵ月連続で低下するなど、09年前半に見られたような雇用情勢の急速な悪化には歯止めがかかりつつあるが、賃金の削減はこれからさらに本格化する可能性が高い。企業部門の改善が家計部門に波及するまでには相当の時間を要するだろう。

経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎(さいとう たろう)

研究領域:経済

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴

・ 1992年:日本生命保険相互会社
・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
・ 2019年8月より現職

・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2018年~ 統計委員会専門委員

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