11月日銀決定会合:政府のデフレ宣言と認識は異なっていない

2009年11月20日

(矢嶋 康次) 金融市場・外国為替(通貨・相場)

■introduction

・政府3年5ヶ月ぶりにデフレ宣言、白川総裁「政府のデフレ宣言と認識は異なっていない」
日銀は19・20日開いた金融政策決定会合で、政策金利の誘導目標を0.1%前後に据え置くことを全員一致で決定した。景気判断は、「持ち直しつつある」から「持ち直している」に上方修正している。
10月末に展望レポートが示され、当面の目玉だったCP・社債買取は年末、企業金融支援特別オペは年度末で終了が決定されており、今回の決定会合で大きな政策変更の可能性は低く、決定内容は予想の範囲内だった。
今回の注目点は、本日政府が発表した3年5ヶ月ぶりの「デフレ宣言」、第2次補正の概要に対する白川総裁の見解だった。
ここ数日、閣僚からデフレ懸念、日銀への牽制発言が相次いでいる。今回月報の物価は、「中長期的な予想物価上昇率が安定的に推移する想定のもと、石油製品価格などの影響が薄れていくため、下落幅が縮小していく」と見方は変えていない。
白川総裁は会見で、政府が「デフレ宣言」をしたことについて、「持続的な物価下落を指しているのであれば、日銀の展望レポートと認識は異なっていない」、また「物価が持続的に下落するのは需給バランスの緩和によるもので、最終需要の弱さにより生じる」と説明。
その上で「政府・日銀とも、最終需要に働きかける努力をしていくことが必要だ」との認識を示す一方で、「物価下落の原因が流動性の制約ではなく、需要自体が不足している時には、流動性を供給するだけでは物価は上がってこない」と追加緩和に慎重な見解を示した。
白川総裁が今回述べた金融政策では解決が難しいという見方は、たしかにその通りだ。しかし、今回の2次補正に盛り込まれる追加経済対策も効果は小さく、2番底リスクを軽減する力はない。とはいえ財政も財源問題がありない袖は振れない状況にある。
財政・金融政策の手詰まり感、デフレ宣言など、何か2000年前半の状況に類似する点が多くなってきている。

総合政策研究部   常務理事 チーフエコノミスト・経済研究部 兼任

矢嶋 康次(やじま やすひで)

研究領域:金融・為替

研究・専門分野
金融財政政策、日本経済 

経歴

・ 1992年 :日本生命保険相互会社
・ 1995年 :ニッセイ基礎研究所へ
・ 2021年から現職
・ 早稲田大学・政治経済学部(2004年度~2006年度・2008年度)、上智大学・経済学部(2006年度~2014年度)非常勤講師を兼務
・ 2015年 参議院予算委員会調査室 客員調査員

第54回 エコノミスト賞(毎日新聞社主催)受賞 『非伝統的金融政策の経済分析』

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