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コラム
各国年金制度の評価インデックスに思う
2009年11月10日
(丸尾 美奈子)
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社会保障制度の根幹をなす老後の所得保障(年金制度)は、先進諸国どこの国にとっても共通の悩みであり、四苦八苦しながら制度改正を進めている。モデルとなるような良い制度があれば、それを模倣する(あるいは参考にする)のは止むを得ないし、時には時間短縮に大いに役立つ。ただし、その国の固有の社会背景や経済状況等が複雑に絡んで成立している各国の年金制度の良し悪しを「横並びで」評価することは非常に難しい。
このほど、この年金制度の比較評価に果敢に取り組んだ例が発表された。オーストラリアのグローバル・コンサルティング・ファームであるマーサー(Mercer)と金融問題の研究組織(非営利)であるThe Melbourne Centre for Financial Studies (MCFS)が、世界で初めて、先進11カ国を対象に年金インデックスMelbourne Mercer Global Pension Indexというものを作成したのである。
同インデックスでは、各国の公的並びに私的年金制度を総括して、(1)適正度、(2)持続性、(3)規範性の観点でサブインデックスを作成し、それらのサブインデックスから全体のインデックスを算出している。
適正度については、最低年金の水準、所得代替率、政府の貯蓄奨励策(税制優遇を中心とした)、私的年金間の移動時の扱い、私的年金への優遇度などを評価している。また、持続性については、公的並びに私的年金の資産総額の対GDP比率や、国民の平均余命と年金開始年齢との相関度等を、完成度については、年金制度の監督当局の監督レベルや運用等のガバナンスなどを、評価している。
同インデックスによると、わが国の年金制度は、調査対象国中最下位の評価となっている。早くから年金を受け取れること、55~64歳の労働力の年金制度への加入状況、監督当局については評価されているが、個人の自主的な貯蓄に対する税制優遇によるサポートが限られていることや私的年金が老齢期の収入源となっていないことなどが、大きな減点要因となっている。また、制度の持続性についても、政府の大きな財政赤字に加えて、老齢年金の開始年齢の早さなどが減点要因となっている。
最高ランクとなったオランダは、最低年金や所得代替率の高さや、年金のポータビリティ、年金資産の充実度が評価されているようである。ニッセイ基礎研レポート8月号で紹介したオーストラリアの年金制度の場合も、税制優遇をかなり大胆に行い、個人が公的年金のみに頼らず自主的に将来の年金財源を蓄えることができるようになっており、政府の年金財政負担が少ないこと、受給開始年齢を68歳まで延長することなど、制度の持続性確保に向けた取組みが見られた。
サブインデックスの掛け目や構成要素などインデックスの妥当性等は議論の分かれるところだろうが、わが国の制度が、欧米諸国の一定の尺度で見た場合、制度として見劣りする結果が出ていることは事実であり、今後の議論の参考にすることは可能かと思われる。
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