在庫調整はどこまで進んだのか~GDP統計から見た在庫調整の進捗状況

2009年09月25日

(斎藤 太郎) 日本経済

  1. 鉱工業指数の在庫指数は在庫調整の大幅な進展を示しているが、GDP統計の在庫残高は、製品在庫以外の在庫(流通在庫、仕掛品在庫、原材料在庫)動向を反映し、高止まりが続いている。
  2. 鉱工業指数の在庫循環図は、2008年10-12月期に「在庫積み上がり局面」から「在庫調整局面」に移行した後、在庫調整の順調な進展を反映し、在庫調整終了を意味する45度線(出荷と在庫の前年比が等しくなる線)に近づいている。これに対し、GDP統計の在庫循環図は2008年10-12月期に「在庫調整局面」に移行した後も在庫の高止まりが続いており、在庫調整の遅れを示すものとなっている。
  3. GDP統計の民間在庫投資が先行きの成長率に及ぼす影響を考えると、マクロベースではさらなる在庫調整が必要な状況が続いていることから、今後数四半期は在庫投資がマイナスで推移し、在庫残高の削減が続けられることになろう。
  4. ただし、民間在庫投資の成長率に対するマイナス寄与は2009年4-6月期の前期比▲0.8%が最大となる可能性が高い。7-9月期以降は少なくともマイナス幅は縮小し、2009年度後半から2010年度にかけては、在庫投資のマイナス幅縮小あるいはプラス転化により、成長率の押し上げ要因となるだろう。

経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎(さいとう たろう)

研究領域:経済

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴

・ 1992年:日本生命保険相互会社
・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
・ 2019年8月より現職

・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2018年~ 統計委員会専門委員

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