鉱工業生産09年5月~5四半期ぶりの増産が確実に

2009年06月29日

(斎藤 太郎) 日本経済

■見出し

・輸送機械が前月比24.8%の大幅増産
・4-6月期は5四半期ぶりの増産が確実、7-9月期も増産へ

■introduction

経済産業省が6月29日に公表した鉱工業指数によると、5月の鉱工業生産指数は前月比5.9%と3ヵ月連続の上昇となった。4月(同5.9%)に続き高い伸びとなったが、事前の市場予想(ロイター集計:前月比7.0%、当社予想は同7.3%)は下回った。出荷指数は前月比4.5%と3ヵ月連続の上昇、在庫指数は前月比▲0.6%と5ヵ月連続の低下となった。在庫率指数は前月比0.1%と小幅ながら3ヵ月ぶりに上昇した。
5月の生産を業種別に見ると、輸出の下げ止まり、環境対応車の購入促進策(減税+補助金)による国内販売の持ち直しを受け、輸送機械が前月比24.8%の大幅上昇となったほか、在庫調整の進展が続く電子部品・デバイスが前月比10.5%と3ヵ月連続で二桁の伸びとなった。一方、設備投資の急速な落ち込みを反映し4月に前月比▲15.0%と急減した一般機械は、同2.3%と2ヵ月ぶりに上昇したが、前年比では4月に続き50%を超える減少(4月:前年比▲50.0%→5月:同▲50.1%)となっており、依然低調な動きが続いている。
速報段階で公表される16業種中、パルプ・紙・紙加工品、繊維を除く14業種が前月比で上昇となり、増産の動きは裾野の広がりを見せ始めている。
財別の出荷動向を見ると、設備投資の一致指標である資本財出荷(除く輸送機械)は1-3月期に前期比▲19.2%と急速に落ち込んだ後、4月が前月比▲15.7%、5月が同▲2.5%となった。4、5月の平均は1-3月期よりも▲17.1%も低い水準となっている。一方、消費財出荷指数は、1-3月期の前期比▲20.4%の後、4月が前月比5.5%、5月が同8.8%となり、4、5月の平均は1-3月期よりも8.2%高い水準となっている。
1-3月期のGDP統計では、民間消費が前期比▲1.1%、設備投資が前期比▲8.9%とともに大きく落ち込んだ。4-6月期は、設備投資は引き続き減少するものの、民間消費は定額給付金の効果などもあり、3四半期ぶりに増加すると予想している。

経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎(さいとう たろう)

研究領域:経済

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴

・ 1992年:日本生命保険相互会社
・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
・ 2019年8月より現職

・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2018年~ 統計委員会専門委員

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