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コラム
私たちの給料はあがるの?
2009年04月01日
(阿部 崇)
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今日から新しい介護報酬によって介護保険サービスが提供される。介護保険サービスの単価である介護報酬は公費(税金)と保険料で構成されているので、その改定(変更)は、被保険者が負担する保険料やサービス利用の際の利用者負担(サービス費の1割)に影響する身近な話である。
年金、医療に代表されるわが国の社会保険は少子高齢化の影響もあって台所事情が厳しい。そのことは、新聞やテレビでも繰り返し報道されていて、国民の重大な関心事の一つとなっているといえ、介護保険も例外ではない。
そのような中で行われた介護報酬改定は予想外の「プラス改定」となった。率で3.0%、額にして2,300億円の上積みと言われている。もちろん、プラス改定自体は歓迎すべきことである。ただ、その目的を誤解してはならない。
人件費集約産業とも言われる介護保険では、過去2回の報酬引き下げによって介護サービスを担う現業スタッフの処遇が悪化していた。平たく言えば、給料水準が相対的に低く、人材が集まらない職場となってしまったのである。人材不足が医療や介護において重大な問題をもたらすことは、産科や小児科にかかる報道等で国民の共通認識となっている。それと同じことが介護保険でも起きないための政治判断として、今回の改定でサービス単価水準が引き上げられたのである。
ちなみに、2,300億円とは、介護サービスの現場で働く介護スタッフ約85万人の月給を2万円上げるに足りる額らしい。
この改定で本当に「私たちの給料はあがるの?」か。
有識者や一般紙は、「事業者や施設への職員給与引上げの確認調査をすべき」の大合唱である。仮に目的がそこにあるならば、一定額を介護スタッフに直接支給する方法を採ればよかったということになる。
報酬改定の本当の目的は、介護サービスの事業者・施設が行うべきは単なる給料の引上げではなく、"処遇"の改善であり、処遇改善を通じた介護サービスの質の向上である。介護スタッフが、正規職員として、無理のない労働環境(夜勤、有給休暇など)で、介護・看護の専門職としてパフォーマンスを発揮する舞台づくりの資金である。
事業者・施設は、"給与引上げ"よりももっと大きく重いボールを投げられてしまっていることを肝に銘じなければならない。そして、行政も給与引上げのチェックに更に時間とお金をつぎ込むのではなく、今こそ、介護サービスの質に対する指導力を発揮することで社会保険の信頼回復に努めるべきである。
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