それでも非正規雇用は増えている

2009年03月27日

(斎藤 太郎) 日本経済

  1. 景気の急速な悪化を受けて、派遣労働者を中心とした非正規労働者の雇用調整が大規模に行われているという見方が一般的になっている。すでに市場の関心は、非正規労働者に始まった雇用調整が正規労働者に本格的に波及するかどうかに移りつつある。
  2. しかし、労働力調査(詳細集計)によれば、非正規雇用は増加を続けており、減少が顕著となっているのはむしろ正規雇用のほうである。非正規雇用の内訳を見ると、派遣社員の増加は頭打ちとなっており、パートタイム労働者は減少しているが、契約社員・嘱託、その他が大幅に増えていることが非正規雇用の拡大に寄与している。
  3. 非正規労働者は、失業率が高い一方で新規就業率も高い。高齢者を中心として正規から非正規への雇用形態の転換が進んでいることも非正規雇用増加の一因と考えられる。
  4. 今回の景気後退局面では、比較的調整を行いやすい非正規労働者を中心に雇用調整が始まったという見方が多いが、実態としては過去の後退局面と同様に正規雇用の削減がまず行われている。
  5. 先行きについては、正規、非正規にかかわらず雇用調整が本格化する公算が大きいが、新卒採用の抑制などを通じて、人件費抑制効果の高い正規労働者に重点を置いた雇用調整が続く可能性もあるだろう。

経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎(さいとう たろう)

研究領域:経済

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴

・ 1992年:日本生命保険相互会社
・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
・ 2019年8月より現職

・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2018年~ 統計委員会専門委員

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