金融機関保有株式買入れ再開:買入総額1兆円、2010年4月までの時限措置

2009年02月03日

(矢嶋 康次) 金融市場・外国為替(通貨・相場)

■introduction

・金融機関保有株式の買い入れを約4年半ぶりに再開
日銀は3日に開催した政策委員会・通常会合で、金融機関保有株式の買い入れを年度内に約4年半ぶりに再開することを決定した。政府は既に銀行などから最大20兆円分の保有株を買い取る方針(銀行等保有株式取得機構を通じて)を決めており、日銀も歩調をそろえた格好だ。
買入総額は1兆円、買入期間は2010年4月末までの時限措置とした。今回の措置は金融政策決定会合ではなく、通常の政策委員会での決定。日銀としては金融機関の健全化を目的とするプルーデンス政策の一環としての位置づけだ(2002年当時と同じ)。
(事態を良くする効果はなし、年度末に向けてさらなる対応が必要に)
足元発表される企業決算でまったく底がイメージできず、期待が高い米国のバットバンク構想もなかなか実現しないなど市場を弱気にさせる材料が重なっている。今回の政策で日銀も危機感を共有したことで、「一定程度の安心感」を市場に与えることはできるのではないか。
ただ、政府の20兆円分に対して今回は1兆円と少なく、時価での買い取りとなると銀行が本当に売却に向かうのかなどの問題もあり、「大きな効果」はやはり期待できない。マインドを多少支えるという程度だ。
筆者は、年度末までに景気がいっそう冷え込み、貸し渋りの動きも強まると見ており、日銀は追加対応を迫られると予想している。

総合政策研究部   常務理事 チーフエコノミスト・経済研究部 兼任

矢嶋 康次(やじま やすひで)

研究領域:金融・為替

研究・専門分野
金融財政政策、日本経済 

経歴

・ 1992年 :日本生命保険相互会社
・ 1995年 :ニッセイ基礎研究所へ
・ 2021年から現職
・ 早稲田大学・政治経済学部(2004年度~2006年度・2008年度)、上智大学・経済学部(2006年度~2014年度)非常勤講師を兼務
・ 2015年 参議院予算委員会調査室 客員調査員

第54回 エコノミスト賞(毎日新聞社主催)受賞 『非伝統的金融政策の経済分析』

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