鉱工業生産08年10月~ITバブル崩壊時を上回る減産ペース

2008年11月28日

(斎藤 太郎) 日本経済

■見出し

・自動車の減産が本格化
・10-12月期はITバブル崩壊時を上回る減産ペースに

■introduction

経済産業省が11月28日に公表した鉱工業指数によると、10月の鉱工業生産指数は前月比▲3.1%と2ヵ月ぶりの低下となり、市場予想を下回った(ロイター集計:前月比▲2.5%、当社予想は同▲2.8%)。出荷指数は前月比▲3.1%と2ヵ月ぶりの低下、在庫指数は前月比1.7%と2ヵ月連続の上昇となった。在庫率指数は前月比3.8%となり、この3ヵ月間で11.1%の急上昇となった。
10月の生産を業種別に見ると、輸出の大幅な減少を主因として輸送機械が前月比▲5.8%と大きく落ち込んだほか、在庫積み上がりが続いている電子部品・デバイスが前月比▲8.9%と大幅な低下となった。また、鉄鋼が前月比▲4.0%と大きく落ち込むなど、自動車減産の影響が素材業種に広がりつつあることをうかがわせるものとなっている。速報段階で公表される16業種中、12業種が前月比で低下(3業種が上昇、1業種が横ばい)となった。
在庫循環図では、7-9月期は「在庫積み上がり局面」に位置していたが、出荷の減少幅が前年比▲7.4%と急拡大(9月は同▲0.6%)したため、10月単月で見ると2001年のITバブル崩壊時以来の「在庫調整局面」に移行した。
財別の出荷動向を見ると、設備投資の一致指標である資本財出荷(除く輸送機械)7-9月期に前期比▲5.6%の大幅減少となった後、10月も前月比▲2.6%と落ち込んだ。7-9月期のGDPベースの設備投資は前期比▲1.7%と4-6月期の同▲1.4%から減少幅が拡大したが、10-12月期も大幅な減少が続く可能性が高い。

経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎(さいとう たろう)

研究領域:経済

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴

・ 1992年:日本生命保険相互会社
・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
・ 2019年8月より現職

・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2018年~ 統計委員会専門委員

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