雇用統計08年10月~非労働力化の進展で失業率が低下

2008年11月28日

(斎藤 太郎) 日本経済

■見出し

・非労働力化の進展で失業率が低下
・非正規雇用比率は4四半期連続で上昇
・求職者数の増加は雇用情勢の厳しさを反映

■introduction

総務省が11月28日に公表した労働力調査によると、10月の完全失業率は前月から0.3ポイント改善し3.7%となった。事前の市場予想(ロイター集計:4.2%、当社予想も4.2%)を大幅に下回る結果となり、失業率はこの2ヵ月で0.5ポイントの大幅低下となった。
雇用者数は前年比0.3%(9月:同0.4%)と伸びが鈍化し、自営業主・家族従業者の減少幅が拡大したため、就業者数は前年比▲0.6%(9月:同▲0.5%)となり、減少幅が若干拡大した。失業者数は前年に比べ16万人の減少(9月は2万人増)となり、7ヵ月ぶりに減少に転じた。
就業者数の減少が続く中でも失業率が低下しているのは、非労働力化の進展により失業者の増加が抑えられている面があるためだ。労働力率(15歳以上人口に占める労働力人口の割合)は9月が0.3%ポイント、10月が0.5%ポイント低下(いずれも前年差)し、労働力人口が前年よりも52万人減となる一方、非労働力人口が56万人増となった。雇用情勢の悪化に伴い求職活動を諦め、労働市場から退出した人が増えている可能性が高い。仕事をしていない人が求職活動をしなければ非労働力人口とされ、失業者にはカウントされないため、失業率は上昇しにくくなるのである。
雇用者数の内訳を従業員規模別に見ると、29人以下の中小企業は前年比▲12万人と14ヵ月連続の減少、30~99人の企業でも▲21万人減と6ヵ月連続の減少となる一方、100人以上の企業では増加を維持した。なお、500人以上の大企業の増加幅は9月の115万人増から27万人増へと急速に縮小したが、これは2007年10月に日本郵政公社の民営・分社化に伴いこの1年間の増加幅が大きくなっていたためである。収益環境がより深刻な中小企業のほうが、雇用情勢が厳しいことは変わりがないだろう。
産業別には、生産活動の低迷を反映し製造業が5ヵ月連続で減少し、減少幅も9月の▲17万人から▲31万人へと拡大した。

経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎(さいとう たろう)

研究領域:経済

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴

・ 1992年:日本生命保険相互会社
・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
・ 2019年8月より現職

・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2018年~ 統計委員会専門委員

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