欧州の金融危機~続く拡大阻止への取り組み

2008年10月17日

(伊藤 さゆり) 欧州経済

  • リーマン・ブラザーズの破綻後に欧州の金融市場の混乱は深刻化した。個別の金融機関の救済や預金保護の上限の引上げ、協調利下げでも危機の広がりに歯止めが掛からず、各中央銀行は流動性の供給体制を一段と強化し、主要国政府は銀行債務への政府保証と公的な資本注入を柱とする金融安定化策による対応を迫られることになった。
  • 主要国の安定化策の公表で、一旦は反発した株価も再度下落、銀行間市場のスプレッドの縮小も僅かに留まっており、市場の緊張状態は続いている。背景には、金融安定化策が即効性に欠けること、実体経済が急速な悪化の兆候を示していること、危機の地域的な拡大による連鎖への不安がある。
  • 主要国が一連の枠組みを効果的に活用し、自国の金融システムの安定化を図ることは重要だが、地域横断的な取り組みを欠けば、危機の拡大を阻止できない。16日のEU首脳会議で方向性が示された統合の深化と拡大に見合ったアプローチで危機を克服することを期待したい。

経済研究部   常務理事

伊藤 さゆり(いとう さゆり)

研究領域:経済

研究・専門分野
欧州の政策、国際経済・金融

経歴

・ 1987年 日本興業銀行入行
・ 2001年 ニッセイ基礎研究所入社
・ 2023年7月から現職

・ 2011~2012年度 二松学舎大学非常勤講師
・ 2011~2013年度 獨協大学非常勤講師
・ 2015年度~ 早稲田大学商学学術院非常勤講師
・ 2017年度~ 日本EU学会理事
・ 2017年度~ 日本経済団体連合会21世紀政策研究所研究委員
・ 2020~2022年度 日本国際フォーラム「米中覇権競争とインド太平洋地経学」、
           「欧州政策パネル」メンバー
・ 2022年度~ Discuss Japan編集委員
・ 2023年11月~ ジェトロ情報媒体に対する外部評価委員会委員
・ 2023年11月~ 経済産業省 産業構造審議会 経済産業政策新機軸部会 委員

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