世界10中銀同時利下げ:「協調」を演出、しかし市場不安は解消されず

2008年10月09日

(矢嶋 康次) 金融市場・外国為替(通貨・相場)

■見出し

・異例の協調介入、中央銀行の強い危機意識
・ただし、利下げ、流動性対策では金融危機は乗り切れず
・市場の期待は公的資本注入、道のりはいまだ不透明

■introduction

8日、FRB、ECBのほか、英イングランド銀行、スイス国立銀行、カナダ中銀、スウェーデン中銀の6中銀は米国から広がった金融市場の混乱収縮に向け、緊急協調利下げに踏み切った。中国などの一部新興国などもこうした動きに同調し、世界の10の中央銀行による異例の同時利下げが行われた。日銀は協調利下げには加わらないが、市場への流動性供給拡大などで協力する。
米欧協調利下げは米同時多発テロが発生した2001年9月以来であるが、これだけ多くの中央銀行が協調利下げに加わるのは過去に例がない。また今回の利下幅が0.5%と大きかったことも異例と言えるだろう。
10日からワシントンでG7が開催され、そこで協調利下げが実施されるとの市場の観測が高かったが、金融市場の混乱はそのタイミングを待つことを許さなかった。
参加中央銀行の数、利下げ幅などを見ると、中央銀行の強い「危機意識」が表れている。市場の不安を少しでも解消しようと、今各国中央銀行ができる最大限の策を打ってきている。

総合政策研究部   常務理事 チーフエコノミスト・経済研究部 兼任

矢嶋 康次(やじま やすひで)

研究領域:金融・為替

研究・専門分野
金融財政政策、日本経済 

経歴

・ 1992年 :日本生命保険相互会社
・ 1995年 :ニッセイ基礎研究所へ
・ 2021年から現職
・ 早稲田大学・政治経済学部(2004年度~2006年度・2008年度)、上智大学・経済学部(2006年度~2014年度)非常勤講師を兼務
・ 2015年 参議院予算委員会調査室 客員調査員

第54回 エコノミスト賞(毎日新聞社主催)受賞 『非伝統的金融政策の経済分析』

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