金融政策・市場の動き(7月)~相場反転のシナリオ描けず

2008年07月04日

(矢嶋 康次) 金融市場・外国為替(通貨・相場)

  1. 資源・食糧の高騰というインフレの波が各国経済を蝕んでいる。「米国経済悪化・信用不安→ドル安→原油高→インフレ→世界経済の下押し→米国経済悪化・信用不安」という負の連鎖が強固な動きとなり、「相場転換のシナリオ」が描けにくくなっている。
  2. 短観(6月調査)では、資源高などの影響を受け、急速に企業の収益力が弱っていることが示された。全体の状況は「景気後退」入りといってもおかしくない。しかし、一方で価格判断DIはオイルショックの水準まで達するなどインフレリスクの高さも示されている。日銀は両リスクを睨みながら現状維持を続けざるを得ない。
  3. (長期金利)当面インフレと景気悪化・信用不安という方向性の見極めがつかず、ボラティリティーの高い展開を予想する。
  4. (為替)FRBの利下げが休止となったが、足元信用不安が再び高まり、さらに米景気対策効果が一巡し始める今秋以降の景気腰折れ懸念が高まっていることでドルの切り返しは限定的にとどまる。

総合政策研究部   常務理事 チーフエコノミスト・経済研究部 兼任

矢嶋 康次(やじま やすひで)

研究領域:金融・為替

研究・専門分野
金融財政政策、日本経済 

経歴

・ 1992年 :日本生命保険相互会社
・ 1995年 :ニッセイ基礎研究所へ
・ 2021年から現職
・ 早稲田大学・政治経済学部(2004年度~2006年度・2008年度)、上智大学・経済学部(2006年度~2014年度)非常勤講師を兼務
・ 2015年 参議院予算委員会調査室 客員調査員

第54回 エコノミスト賞(毎日新聞社主催)受賞 『非伝統的金融政策の経済分析』

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