金融政策・市場の動き(5月)~市場の潮目は変わったのか?

2008年05月02日

(矢嶋 康次) 金融市場・外国為替(通貨・相場)

  1. ベアスターンズの救済をきっかけに市場の信用不安は大きく後退している。市場では先行き楽観的な見方もでているが、筆者は夏場にかけて慎重な見通しを維持している。それは市場の関心が、信用不安から今後は景気悪化にシフトし、その過程で景気悪化が現実のものとなる中で、先行き不安が高まりそれを織り込まざるを得なくなると見込むからだ。
  2. (金融政策)白川総裁はじめての展望レポートが4月30日に公表された。金融政策運営について、「現在のように不確実性が極めて高い状況のもとで、先行きの金融政策運営について予め特定の方向性を持つことは適当ではない」とし、従来の金利正常化から「中立姿勢」への変更を明確に打ち出した。
  3. (長期金利)世界的に経済は右肩下がりであり、下振れリスクが高い状況に変化はない。日本経済も景気足踏みから後退リスクが高い状況にある。FRBは明確な利下げ打ち止め感を示さず、日銀も展望レポートで金利正常化路線から中立姿勢に変更しており、金利上昇が継続する状況にはない。
  4. (為替)足元、信用不安が後退しドルが戻しているが、今後米国経済の悪化に伴い、米国利下げ観測も再び高まり、ドル安圧力が高まるだろう。ドルが持ち直すのは、米国経済の悪化が緩やかに止まる年後半以降となるだろう。

総合政策研究部   常務理事 チーフエコノミスト・経済研究部 兼任

矢嶋 康次(やじま やすひで)

研究領域:金融・為替

研究・専門分野
金融財政政策、日本経済 

経歴

・ 1992年 :日本生命保険相互会社
・ 1995年 :ニッセイ基礎研究所へ
・ 2021年から現職
・ 早稲田大学・政治経済学部(2004年度~2006年度・2008年度)、上智大学・経済学部(2006年度~2014年度)非常勤講師を兼務
・ 2015年 参議院予算委員会調査室 客員調査員

第54回 エコノミスト賞(毎日新聞社主催)受賞 『非伝統的金融政策の経済分析』

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