2月マネー関連~貸出緩やかな増加、ただし先行き下振れリスクは高い

2008年03月10日

(矢嶋 康次) 金融市場・外国為替(通貨・相場)

■見出し

・貸出動向:緩やかな増加、ただし先行き下振れリスクは高い
・マネー:投信を通じ広義流動性からマネーサプライへシフト
■introduction

日本銀行が3月10日に公表した貸出・資金吸収動向等によると、2月の総貸出(平残、銀行・信金計)は前年比0.8%(25カ月連続のプラス)と緩やかな増加を続けている。2月についてはM&A関係の貸出や原材料価格高騰による運転資金需要が高まり、先月に比べて貸出の伸びが高まったようだ(図表1、2)。
ただし、先行きについては下振れリスクが高い。貸出先別貸出金(2/29日公表、1月分)を見ると、中小企業向けを中心に法人向けのマイナス傾向が顕著になってきている(図表3) 。原材料価格の高騰に建築基準法・貸金業法の法改正に伴う影響なども重なり、倒産件数も零細・中小企業を中心に増加傾向が続いている(図表4)。中小企業の資金繰りも悪化している中、サーベイ調査にでているように融資姿勢の厳格化の動きがいっそう強まる可能性が高い(図表5,6)。クレジットクランチといった状況に陥るリスクも高い。
なお建築基準法の影響で個人向け住宅ローンの減少も懸念されるが、現段階まで影響はでていないようだ。

総合政策研究部   常務理事 チーフエコノミスト・経済研究部 兼任

矢嶋 康次(やじま やすひで)

研究領域:金融・為替

研究・専門分野
金融財政政策、日本経済 

経歴

・ 1992年 :日本生命保険相互会社
・ 1995年 :ニッセイ基礎研究所へ
・ 2021年から現職
・ 早稲田大学・政治経済学部(2004年度~2006年度・2008年度)、上智大学・経済学部(2006年度~2014年度)非常勤講師を兼務
・ 2015年 参議院予算委員会調査室 客員調査員

第54回 エコノミスト賞(毎日新聞社主催)受賞 『非伝統的金融政策の経済分析』

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