中国経済動向 ~鈍化し始めた貿易黒字拡大のペース ~

2008年01月18日

(伊藤 さゆり) 欧州経済

  • 中国の貿易黒字は、2007年も2,622億ドルと過去最高額を更新したが、10月以降、貿易黒字の増加ペースは鈍っている。鉱物性燃料の貿易赤字が拡大、労働集約的製品の黒字拡大ペースが鈍化、金属製品の黒字額も輸出の急減速で減少している。輸出抑制策のほか、能力増強投資の一巡や、原油価格の上昇、米国の景気減速と高成長が続く中国との内外景気格差の拡大という複数の要因が影響していると考えられよう。
  • 足もとの統計は「デカップリング(切り離し)」の期待通りではない。米国の個人消費の鈍化が明確になり、EUの需要アブソーバー機能にも一層の拡大が見込めないことから、中国の輸出は鈍化、貿易黒字の頭打ち傾向は続くだろう。
  • 日本にとって中国の輸出相手国としての重要性は高まっている。電気機械の世界需要の動向は日本の対中輸出を左右する大きな要因だが、2008年は中国の成長が内需に軸足を移すと見られることから、中国国内市場での競争力の重要性が増してくるだろう。

経済研究部   常務理事

伊藤 さゆり(いとう さゆり)

研究領域:経済

研究・専門分野
欧州の政策、国際経済・金融

経歴

・ 1987年 日本興業銀行入行
・ 2001年 ニッセイ基礎研究所入社
・ 2023年7月から現職

・ 2011~2012年度 二松学舎大学非常勤講師
・ 2011~2013年度 獨協大学非常勤講師
・ 2015年度~ 早稲田大学商学学術院非常勤講師
・ 2017年度~ 日本EU学会理事
・ 2017年度~ 日本経済団体連合会21世紀政策研究所研究委員
・ 2020~2022年度 日本国際フォーラム「米中覇権競争とインド太平洋地経学」、
           「欧州政策パネル」メンバー
・ 2022年度~ Discuss Japan編集委員
・ 2023年11月~ ジェトロ情報媒体に対する外部評価委員会委員
・ 2023年11月~ 経済産業省 産業構造審議会 経済産業政策新機軸部会 委員

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