鉱工業生産07年9月~電子部品・デバイスの在庫調整が進展

2007年10月26日

(斎藤 太郎) 日本経済

■見出し

・7-9月期の生産は前期比2.2%
・電子部品・デバイスの在庫調整が急進展
・10-12月期も増産計画

■introduction

経済産業省が10月26日に公表した鉱工業指数によると、9月の鉱工業生産指数は前月比▲1.4%と2ヵ月ぶりに低下し、ほぼ事前の市場予想通り(ロイター集計:前月比▲1.3%、当社予想は▲1.2%)の結果となった。出荷指数は、前月比▲1.9%と2ヵ月ぶりの低下、在庫指数は前月比1.0%と2ヵ月連続の上昇となった。
9月の生産を業種別に見ると、電子部品・デバイスが前月比2.1%と4ヵ月連続で上昇したが、8月に高い伸びを記録した輸送機械(8月:前月比17.0%→9月:同▲4.8%)、情報通信機械(8月:前月比4.5%→9月:同▲10.5%)などが大幅に低下するなど、速報段階で公表される16業種中、12業種が低下(4業種が上昇)となった。9月の生産指数は比較的大きめのマイナスとなったが、8月の大幅増(前月比3.5%)の反動減の範囲内にとどまっており、鉱工業生産の上昇傾向は維持されていると判断される。
7-9月期の生産は前期比2.2%となり、4-6月期の同0.2%から大幅に伸びが高まった。業種別には、電子部品・デバイスが在庫調整の進展に伴い、前期比8.4%の高い伸びとなり、7-9月期の生産指数を1.3%押し上げた。また、輸送機械は、新潟県中越沖地震に伴う操業停止から7月には前月比▲7.2%と急速に落ち込んだが、生産が再開された8月には同17.0%と急上昇し(9月は同▲4.8%)、7-9月期を通してみれば、前期比4.2%の高い伸びとなった。自動車輸出は、米国向けは低調だが、それ以外の地域向けが好調であり、国内の自動車生産を大きく押し上げている。電子部品・デバイスと輸送機械の2業種だけで、7-9月期の生産指数を2%近く押し上げる形となった。
設備投資の一致指標である資本財出荷(除く輸送機械)は9月には前月比▲7.3%の低下となったが、7-9月期では前期比2.3%(4-6月期:同2.1%)となった。11/13公表予定の7-9月期GDP1次速報では、3四半期ぶりに設備投資が前期比で増加に転じる可能性が高い。
ただし、6/20に施行された改正建築基準法により建築確認の審査基準が厳格化された影響で、建築着工が足もと大きく落ち込んでいることが、設備投資を下押しする可能性があることには留意が必要である。7-9月期の建設財出荷指数は前期比▲4.0%と急速に落ち込んだ。建設財出荷の多くは、公共投資、住宅投資向けであるが、設備投資の約4分の1を占める建設投資向けの出荷も含まれていると考えられる。建設投資の低迷が設備投資を下押しする可能性があることには留意が必要だろう。

経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎(さいとう たろう)

研究領域:経済

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴

・ 1992年:日本生命保険相互会社
・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
・ 2019年8月より現職

・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2018年~ 統計委員会専門委員

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