10月BOE金融政策委員会~金融混乱の実体経済への影響を注視

2007年10月05日

(伊藤 さゆり) 欧州経済

■見出し

・政策金利は3カ月連続で据え置き
・当面は実体経済への影響を見極めるための様子見

■introduction

・取り付け騒ぎでスタンスを転換、市場は小康状態
10月3日、4日に開催されたイングランド銀行(以下、BOE)の金融政策委員会(MPC)は、政策金利を5.75%の水準で据え置くことを決めた。
BOEは、8月にサブプライム問題が世界的に広がった後も、FRBやECBを始めとする多くの中央銀行が行った臨時の流動性供給に対して、「過剰なリスク・テイクを奨励して、将来の金融危機の種をまくことになる」として批判的な立場をとり、短期金融市場での需給の逼迫に静観の構えを採ってきた。
しかし、9月13日にBOEから緊急融資を受けた中堅銀行のノーザン・ロックに取り付け騒ぎが発生したことをきっかけに、預金の全額保護を表明、通常は行わない3カ月物の資金供給を行う用意があることを示し、銀行がBOEから借入を行う際の担保として、住宅ローン債権を認める、という大きな方向転換を余儀なくされた。

・政策金利の据え置きは大方の予想通り
3カ月物の資金供給は、政策金利+1%以上という懲罰金利が適用されたこともあり入札する金融機関はなかったが、3カ月物のインター・バンク金利は、BOEの政策方針の転換や、米国の利下げの効果もあって、ピーク・アウトしており、9月のMPC直後に比べれば市場環境は改善している。
それでも、市場の不透明感は払拭されていないこと、サブプライム問題が、金融システムの内部の問題に留まらず、取り付け騒ぎという家計の不安に直結する方向に展開したことから、今回の据え置き決定は、大方の予想通りの結果であった

経済研究部   常務理事

伊藤 さゆり(いとう さゆり)

研究領域:経済

研究・専門分野
欧州の政策、国際経済・金融

経歴

・ 1987年 日本興業銀行入行
・ 2001年 ニッセイ基礎研究所入社
・ 2023年7月から現職

・ 2011~2012年度 二松学舎大学非常勤講師
・ 2011~2013年度 獨協大学非常勤講師
・ 2015年度~ 早稲田大学商学学術院非常勤講師
・ 2017年度~ 日本EU学会理事
・ 2017年度~ 日本経済団体連合会21世紀政策研究所研究委員
・ 2020~2022年度 日本国際フォーラム「米中覇権競争とインド太平洋地経学」、
           「欧州政策パネル」メンバー
・ 2022年度~ Discuss Japan編集委員
・ 2023年11月~ ジェトロ情報媒体に対する外部評価委員会委員
・ 2023年11月~ 経済産業省 産業構造審議会 経済産業政策新機軸部会 委員

レポートについてお問い合わせ
(取材・講演依頼)

関連カテゴリ・レポート