雇用の非正規化には労働者側の要因も

2007年09月21日

(斎藤 太郎) 日本経済

  1. 雇用情勢は改善傾向を強めており、長期にわたり減少が続いていた正社員も2006年1-3月期以降は増加している。しかし、パートタイム労働者、派遣社員などの非正社員がそれを上回るペースで増えているため、非正規雇用比率は上昇を続けている。
  2. 非正規雇用比率の上昇には、正社員に比べて賃金水準が低く、雇用調整が行いやすい非正規雇用の活用を進めてきたという企業側の要因が大きかったが、ここにきて企業は正社員の採用にも積極的な姿勢を見せ始めている。
  3. 一方、パートタイム労働を希望する求職者の割合は上昇を続けており、失業者、転職希望者が探している仕事の形態も、非正規雇用の割合が高まっている。
  4. 企業側の要因に加えて、ライフスタイルや就業に対する価値観の多様化等を背景として、労働者側が非正規雇用を求める傾向が強まっていることも雇用の非正規化に影響していると考えられる。このため、労働需給の改善が続いても、非正規雇用比率の上昇には歯止めがかかりにくいだろう。

経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎(さいとう たろう)

研究領域:経済

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴

・ 1992年:日本生命保険相互会社
・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
・ 2019年8月より現職

・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2018年~ 統計委員会専門委員

レポートについてお問い合わせ
(取材・講演依頼)