欧州中央銀行は9月利上げの選択肢を確保

2007年08月24日

(伊藤 さゆり) 欧州経済

  • ECBは22日の声明で、長めの資金供給で短期金融市場の正常化を促す意志と同時に、金融政策はマクロ経済の見通しに基づいて運営するという基本スタンスを示した。
  • 9月は四半期に一度のECBスタッフによる経済見通しの公表月にあたるため、政策決定と見通しの修正内容との間には整合性が求められる。成長率見通しは、5四半期ぶりに小幅な下方修正となる可能性があるが、経済情勢と当面の見通しは「良好」という判断は維持されそうだ。インフレ見通しも、前回6月の2007年、2008年とも2.0%から大きくは修正されず、上振れリスクへの強い警戒感も維持されるだろう。
  • ECBは9月利上げの方針を極力維持し、向こう2週間で市場の不安感が払拭され、市場の正常化が果たされるか否かで、最終的な判断を下すことになろう。
  • ECBの金融政策の決定は全員一致とされているが、金融環境変化への対応力や、潜在的なリスクに差異がある。追加利上げへのコンセンサスの形成は、難しくなっていると想定される。

経済研究部   常務理事

伊藤 さゆり(いとう さゆり)

研究領域:経済

研究・専門分野
欧州の政策、国際経済・金融

経歴

・ 1987年 日本興業銀行入行
・ 2001年 ニッセイ基礎研究所入社
・ 2023年7月から現職

・ 2011~2012年度 二松学舎大学非常勤講師
・ 2011~2013年度 獨協大学非常勤講師
・ 2015年度~ 早稲田大学商学学術院非常勤講師
・ 2017年度~ 日本EU学会理事
・ 2017年度~ 日本経済団体連合会21世紀政策研究所研究委員
・ 2020~2022年度 日本国際フォーラム「米中覇権競争とインド太平洋地経学」、
           「欧州政策パネル」メンバー
・ 2022年度~ Discuss Japan編集委員
・ 2023年11月~ ジェトロ情報媒体に対する外部評価委員会委員
・ 2023年11月~ 経済産業省 産業構造審議会 経済産業政策新機軸部会 委員

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