金融政策・市場の動き(8月)~貸出鈍化が鮮明

2007年08月03日

(矢嶋 康次) 金融市場・外国為替(通貨・相場)

  1. (トピックス)年明け以降、貸出鈍化が鮮明になってきている。中小企業を中心に法人向けが足元前年比マイナスに転じている。日銀の利上げピッチ、企業の金利先高感がどのように形成されるか、信用リスク拡大の動きが銀行の融資態度にどの程度影響を与えるのか、しばらく要注意だ。
  2. (金融政策)今回の選挙結果は、少し長めのタームでは金融政策に対していくつかの問題や制約を課したが、8月の利上げの是非についてはほとんど影響なし。8月利上げの是非は、日銀が(1)サブプライムローンの影響をどこまで読みきれるか、(2)市場が落ち着きを取り戻せるか、にかかってきている。
  3. (長期金利)海外金利の低下の影響から一旦落ち着いた展開となるだろう。ただし、年度後半になると、国内景気の再加速、賃金の上昇などが見え始め、日銀の連続利上げへの思惑が徐々に高まり、上昇幅が拡大すると予想する。
  4. (為替)当面、サブプライム問題と日米の絶対金利差の存在という両サイドの材料が綱引きとなり、ボックス圏の動きを予想する。ただし、年度後半以降は、(1)国内景気の加速に伴い、日銀の利上げペース加速の予想が強まり、(2)08年の大統領選挙を控え再び米国の対外不均衡問題が市場でテーマとなり始めることもあり、円高基調に転じると予想。

総合政策研究部   常務理事 チーフエコノミスト・経済研究部 兼任

矢嶋 康次(やじま やすひで)

研究領域:金融・為替

研究・専門分野
金融財政政策、日本経済 

経歴

・ 1992年 :日本生命保険相互会社
・ 1995年 :ニッセイ基礎研究所へ
・ 2021年から現職
・ 早稲田大学・政治経済学部(2004年度~2006年度・2008年度)、上智大学・経済学部(2006年度~2014年度)非常勤講師を兼務
・ 2015年 参議院予算委員会調査室 客員調査員

第54回 エコノミスト賞(毎日新聞社主催)受賞 『非伝統的金融政策の経済分析』

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