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コラム
”衆議院的”参議院への懸念-社会保障政策への影響は-
2007年08月01日
(阿部 崇)
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7月29日投開票の参議院選挙が終了した。結果は当日から報道されている通り、参議院での与野党議席数逆転というものであった。今現在の話題としては、選挙結果の責任論や、前国会で多発した重要法案の強行採決という手法への歯止め、などから、臨時国会での衆議院解散総選挙による政権信任の是非にまで及んでいる。これらについては、様々な人が、様々な立場から、様々な媒体で、様々な意見を交わしているが、ここでは、残念ながらその本質が選挙の争点とはならなかった「社会保障政策」の面から、参議院選挙を振り返ってみたい。
参議院選挙比例区といえば、集票力をもった著名候補者や業界・団体の推薦を受けた候補者が名を連ねることが1つの大きな特徴であろう。今回の選挙においても、医療・介護等の社会保障政策に大きな影響力のある各団体がもつ政治組織が推薦する候補者が多数あった。日本医師連盟推薦の武見敬三氏、日本歯科医師連盟推薦の石井みどり氏、日本薬剤師連盟推薦の藤井基之氏、日本看護連盟推薦の松原まなみ氏、全国介護政治連盟推薦の仲宗根康人氏などである。前回の2004年改選では各々の団体が組織票を固め、推薦候補達が順当に当選を果たしたが、今回当選したのは、このうち日本歯科医師連盟推薦の石井みどり氏1人であった。自民党からの立候補は2007年改選では不運な巡り合わせとも言えるが、「半数改選ごとに1議員」という片輪を失い、それぞれの団体が有する社会保障政策への影響力は微妙な変化をみせるのではないだろうか。
確かに、本会議における法案議決権は1票であっても、各院の委員会採決が事実上の議決とも言われる現国会運営における厚生労働委員会での活動や関係省庁との折衝・調整など、上記の議員達が陰に陽に社会保障政策に影響を与えていることは、誰しもが認めるところであろう。
しかし、他方で、時の勢力と一線を画し「理」の府と呼ばれる参議院の所属議員として、専門的な観点・長期的な視野に立った活動を行っていることもまた事実である。
医療費・介護費の"適正化"の名の下に、「ムダの排除」のみならず、「ムダを生み出す可能性のある仕組み自体の排除」とも思える政策が押し進められている今、皮肉にも時の民意を忠実に反映した"衆議院的"参議院が、社会保障政策から「専門的」「長期的」という要素を奪ってしまわないかが懸念される。
年金記録の通知、介護事業者への規制など、急ぐべき対応と同時に、30年50年先を見た「専門的」観点・「長期的」視野が社会保障政策には求められるのである。
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