輸出の基調をどう見るか~乖離する輸出数量と実質輸出

2007年06月22日

(斎藤 太郎) 日本経済

  1. 輸出に対する見方が政府と日銀で分かれている。政府は輸出の基調判断を「横ばいとなっている」としているのに対し、日銀は「増加を続けている」と、政府よりも強めの判断をしている。
  2. これは、輸出の主な判断材料として、政府は一進一退の動きを続ける「輸出数量指数(輸出金額/輸出価格)」、日銀はほぼ一本調子で上昇してきた「実質輸出指数(輸出金額/輸出物価)」を用いているためである。
  3. 日銀が作成する実質輸出は、GDPの実質輸出(財)、鉱工業指数の輸出向け出荷に近い動きをするため、輸出の基調判断をするのに適した指標と言える。ただし、実質輸出を算出する際に用いられる輸出物価指数は、カバレッジが低いことや、地域別の指数が存在しないといった問題があることに留意する必要がある。
  4. 実質輸出指数は4月に前月比▲3.0%となった後、5月は同2.8%となり、4、5月の平均は1-3月期比で▲1.0%となった。5月までの実質輸出の動きからは、「輸出の増加基調は崩れていないものの、その勢いは鈍化している」と判断できるだろう。

経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎(さいとう たろう)

研究領域:経済

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴

・ 1992年:日本生命保険相互会社
・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
・ 2019年8月より現職

・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2018年~ 統計委員会専門委員

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