金融政策・市場の動き~G7で円安是正が宿題となるか

2007年02月02日

(矢嶋 康次) 金融市場・外国為替(通貨・相場)

  1. 円の独歩安が続いている。2月G7(9-10日)の注目は、円安が各国共通の問題となり、円安是正が日本の「宿題」となるかどうか。宿題となれば日銀にとって、利上げの地ならしはしやすくなる。
  2. 日銀は昨年12月、1月と2回連続で利上げを見送った。いずれも市場に織り込ませておきながら、直前で断念する形となっており、これ以上の日銀の信認低下を回避する意味から、2月の決定会合での利上げ問題への対応は日銀にとって正念場だ。
  3. ただ、1月決定会合後公表された統計は、どちらかといえば弱いものが目立った状況。唯一、審議委員の意見が変わる可能性があるのが、2月15日発表のGDP統計を受けての利上げの可能性のみ。
  4. 長期金利は、米国長期金利の上昇に連動し、イールドカーブがスティープ化する圧力が高まろう。ただし(1)日銀の連続利上げ観測が醸成されない、(2)国内の先行き景気に対して不透明感が払拭されないため、07年前半の上昇幅は限定的。
  5. 円ドルレートは、米国利下げ期待が大きく後退したことで、目先ドルの高値をトライする展開となるだろう。ただし、米国のソフトランディング期待は高まっているとはいえ、成長鈍化の方向性には変わりなく、利下げ期待が払拭されたわけではない。また世界の通貨間では円の独歩安の状態となっていることから潜在的な円高圧力が高いことなどもあり、ドルの上値をある程度抑えるだろう。

総合政策研究部   常務理事 チーフエコノミスト・経済研究部 兼任

矢嶋 康次(やじま やすひで)

研究領域:金融・為替

研究・専門分野
金融財政政策、日本経済 

経歴

・ 1992年 :日本生命保険相互会社
・ 1995年 :ニッセイ基礎研究所へ
・ 2021年から現職
・ 早稲田大学・政治経済学部(2004年度~2006年度・2008年度)、上智大学・経済学部(2006年度~2014年度)非常勤講師を兼務
・ 2015年 参議院予算委員会調査室 客員調査員

第54回 エコノミスト賞(毎日新聞社主催)受賞 『非伝統的金融政策の経済分析』

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