大幅に改定された民間在庫~推計方法の改善余地を探る

2006年09月22日

(斎藤 太郎) 日本経済

  1. 2006年4-6月期のGDP2次速報では、実質GDP成長率は前期比0.2%(年率1.0%)と、1次速報の前期比0.2%(年率0.9%)からほぼ変わらなかったが、民間在庫品増加は前期比・寄与度▲0.2%から同▲0.0%へと大幅に上方改定された。
  2. 民間在庫の1次速報から2次速報への改定幅は、設備投資と並んで大きい。これは、1次速報で仮置きしている仕掛品在庫、原材料在庫を、2次速報では「法人企業統計」を用いて推計するためである。1次速報で前期と同じ値としている仕掛品在庫、原材料在庫の仮置きの方法は再検討する余地がある。推計精度向上のためには、速報段階で民間在庫の形態別内訳を公表することも必要だろう。
  3. 今回の2次速報では、民間在庫の季節調整のかけなおしを主因として、2006年1-3月期以前の成長率が大きく改定された。これはGDP統計の季節調整が不安定であることを示している。季節調整を安定的なものにするためには、GDP統計の93年以前の系列の遡及推計を速やかに行い、季節調整期間を長くすることが望まれる。

経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎(さいとう たろう)

研究領域:経済

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴

・ 1992年:日本生命保険相互会社
・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
・ 2019年8月より現職

・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2018年~ 統計委員会専門委員

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