金融政策・市場の動き~次回日銀利上げと米FOMC利下げ時期

2006年08月04日

(矢嶋 康次) 金融市場・外国為替(通貨・相場)

  1. ゼロ金利解除後、市場では次回利上げが早期に行われるとの観測は大きく後退している。日銀は、ボードメンバー間で多少の幅はあるにせよタカ派一色と見ていい状況で、早ければ10-12月に次回利上げを狙うというのが基本路線だろう。
  2. 日銀券が4カ月連続で1%を下回る伸びにとどまっている。タンス預金が動き始めると伸びがマイナスとなる可能性が高い。日銀が保有する長期国債の残高と日銀券発行残高には大きな乖離があり、残高が一致するまでには時間がかかる。しかし、日銀券減少が続くことになれば、市場の先読み、すなわち近い将来両者の乖離はなくなり見直しは必至だとの見方が強まり、これが長期金利の不安定要因となるだろう。
  3. 当面、長期金利は動意がつかめにくい展開が続くだろう。日銀の次回利上げに向けた情報発信は、米国のソフトパッチが確認される早くとも秋以降になる見込みで、市場参加者も様子見が続こう。
  4. 円ドルレートは、短期的には、(1)米国の追加利上げ期待が今後もくすぶる、(2)中東情勢など地政学リスクの高まりなどドルの底固い局面もあるが、トレンドとしては、(1)米国の対外不均衡問題や、(2)中間選挙をにらんだドル安政策観測の高まりなど根強いドル安要因により、緩やかなドル安・円高に向かう展開となろう。

総合政策研究部   常務理事 チーフエコノミスト・経済研究部 兼任

矢嶋 康次(やじま やすひで)

研究領域:金融・為替

研究・専門分野
金融財政政策、日本経済 

経歴

・ 1992年 :日本生命保険相互会社
・ 1995年 :ニッセイ基礎研究所へ
・ 2021年から現職
・ 早稲田大学・政治経済学部(2004年度~2006年度・2008年度)、上智大学・経済学部(2006年度~2014年度)非常勤講師を兼務
・ 2015年 参議院予算委員会調査室 客員調査員

第54回 エコノミスト賞(毎日新聞社主催)受賞 『非伝統的金融政策の経済分析』

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