金融政策・市場の動き~展望リポート:物価上昇幅拡大予想

2006年05月02日

(矢嶋 康次) 金融市場・外国為替(通貨・相場)

  1. 日銀は4月28日、展望リポートを公表した。2007年度にかけ息の長い景気回復が続き、物価は緩やかな上昇を続けるとの見通しを示した。将来の物価上昇圧力のトーンが強く出ており、日銀の中長期的なリスク意識はかなり物価上昇へのバイアスがあることを印象付ける内容となっている。
  2. 当座預金残高の削減中(6月末頃までに)、米国景気の減速や円高進行が本格化しなければ、夏場に(中間レビューがなされる7月13~14日、または8月10~11日のいずれかに)、ゼロ金利解除を模索することになりそうだ。
  3. 当面、長期金利は少し広めのレンジでの横ばい推移を予想する。早期利上げ、年内の追加利上げ観測は金利上昇要因となるが、株軟調、円高基調など金利低下圧力も一方で存在し、上昇・低下両要因に振られるボラタイルな展開となろう。
  4. 当面、円ドルレートは、徐々にレンジが円高になっていく展開を予想する。米国の不均衡問題に焦点が当たり始め、さらに米国の利上げ休止が織り込まれ始めていることでドル安円高圧力は強いが、絶対金利差が、ドル安のスピード調整を果たすことが期待できる。ただし、市場が今後の米国経済の鈍化・利下げを織り込みにいくと円高ピッチは速まる。そのシナリオの発現率は高まっていることは要注意だ。

総合政策研究部   常務理事 チーフエコノミスト・経済研究部 兼任

矢嶋 康次(やじま やすひで)

研究領域:金融・為替

研究・専門分野
金融財政政策、日本経済 

経歴

・ 1992年 :日本生命保険相互会社
・ 1995年 :ニッセイ基礎研究所へ
・ 2021年から現職
・ 早稲田大学・政治経済学部(2004年度~2006年度・2008年度)、上智大学・経済学部(2006年度~2014年度)非常勤講師を兼務
・ 2015年 参議院予算委員会調査室 客員調査員

第54回 エコノミスト賞(毎日新聞社主催)受賞 『非伝統的金融政策の経済分析』

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