改善していた素材業種の交易条件

2005年12月22日

(斎藤 太郎) 日本経済

<修正交易条件指数から見た収益環境の実態>

  1. 交易条件指数の悪化が長期化しているにもかかわらず、製造業の企業収益は好調が続いている。交易条件指数は素材業種のほうが加工業種よりも悪化幅が大きいが、企業収益の伸びはむしろ素材業種のほうが高い。
  2. 交易条件指数は、投入量と産出量の水準の違いが考慮されていないこと等から、価格面から見た収益環境の実態を反映していない可能性がある。
  3. 交易条件の実態をより正確に見るために作成した「修正交易条件指数」によれば、素材業種の交易条件は2003年度から2004年度にかけて、公表値の動きとは逆に改善傾向を示しており、このことが企業収益の押し上げ要因として働いていた。
  4. しかし、2005年度入り後は、素材業種でも価格転嫁率が低下し始め、2005年7-9月期以降は素材業種の修正交易条件指数も前年比でマイナスとなっている。商品市況の上昇により素材業種の収益が大きく押し上げられるという局面はすでに終了した可能性が高く、加工業種と同様に、売上(数量)が伸びなければ増益は確保できないという収益構造へと変わりつつある。

経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎(さいとう たろう)

研究領域:経済

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴

・ 1992年:日本生命保険相互会社
・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
・ 2019年8月より現職

・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2018年~ 統計委員会専門委員

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